【d!】雇われ先は吸血鬼だらけ《番外編》

◇ ページ29

「しっ、て、る」

がり、と未だ牙を食い込ませた手首。
どくりと流されるもの…否私が口走ったことに私自身が驚く


今……なんて？

「へえ、じゃあなんて意味なんやろ？教えて下さい」
ずい、と手首から口が離れて顔が近づいた。
また、嬉しそうに目が細められている。

「わから、な、アッ！？」
「あれ？毒足りてへんのかなあ…失礼」

またじわりと入り込む毒。
毒、毒……！

「わたし、チーノ君のこと大嫌い」


「…………ッ！
なるほど…はは、なんや。面白い人やん。」

わかった、仕組みを理解した。多分チーノ君の毒は【嘘つき】だ。あべこべとも言うのだろうか

「私チーノ君のこと初めから嫌な人だと思ってたし、瓶底メガネもなにそれって思ってた。変なのーって」

「……」

「チーノ君全然かっこよくなくて私もうため息ものだったよ！
オレンジの瞳だって私なんとも……」

おや、私の口撃が効いたのだろうか。だんまりと下を向いた彼に私は申し訳なく思ってしまう

「チーノく」
「………………！」
「わ、、あ、」

声をかけようとしたチーノ君は、顔を上げてこちらをキッと睨んで会議室を出ていってしまった…

今までとは違う。細められた鋭く怪しい目つきではなく。
恥ずかしさでいっぱいの困ったような瞳


「顔……」


真っ赤だった、なあ、



案外可愛らしい反応を見せてくれたチーノ君に私は油断してこの後グルッペンと会い、彼をショック死寸前まで追い詰めてしまったのはまた別の話




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