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「こ、こんなところ入れない……!」
「そお?でも入ろ?マスター!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」

カランと可愛らしい鈴がなって来店を知らせる。奥には老年の、いかにもベテランなおじ様がにこりと微笑んでいた。

「ここでテーラーをさせて頂いてます。宜しくお願い致します」
「こ、こ、こここちらこそ!
城で幹部様の侍女をやらせて頂いてます。Aともうしまづウッ」

舌噛んだ……ッ!
横を見たらそれはもう爆笑している鬱先生。
すねを蹴ってやった。

「いったあ!なにすんねん!」
「笑ったの誰よ」
「いや、あれは笑うやろ『もうしまヅウ!』
痛あっ!!また蹴った!!」

「クス、お似合いですね」

「「……」」

2人で顔を真っ赤にして、テーラーさんが私を奥に案内した。
どうやら事前にいろんな服を用意してくれたらし……エッ待ってこれ全部…………?特注…?考えるをやめた。

試着室に入って、鬱先生の色のワンピースを着た。生地が、なんか、違う……肌触りのいい。
一緒にかけられてあった真珠のネックレスをつけて鬱先生がいるという試着室の前に連れてこられた。

「……鬱先生?」
「ん?Aちゃんおるの!?ちょ、ちょっとまっていま出アッ!」

すっ転んだ鬱先生が気になってカーテンを開けた。
目の前には、さっきのよれよれのスーツではなく、ビシッと、しかし胸のハンケチやネクタイ、ピンに遊びを感じられるものになっていた。

「似合ってますね」
「…………入って」

ぐいっと引っ張られて試着室の鬱先生の胸に飛び込んだ。少し香るシトラスの匂い。

「Aちゃんもよお似合ってる。」
「あ、ありがとうございます」
「敬語、」
「ありがと…すごい、嬉しい」

にこ、と笑ってみせる。上手く笑えているかな?恥ずかしくてたまらないのだけど。

「……はぁ〜〜、あかん。ごめん」
「えっ……?」
ほんまにごめん、そう耳元で聞こえる。
私は察して、首を差し出した

「えっ?」
「……どーぞ。
服もあんなに買ってもらってむしろこれで足りるのかわからないけど。」

ぼぼ、と体温が上がる感覚。首筋にはしる痛みと目から溢れる涙。

「あぁ……可愛い。」

べろりと涙を舐められた。
不思議と嫌な気分でないのが本当に不思議だ。


「やっぱり、俺の毒が一番君に似合っとんよ」
「なに、それ」





変な鬱先生、






「やっぱりお似合いでございますよ」



テーラーさんは強いのだ。
________
リクエストありがとうございました!

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アリス - お疲れさまでした。とてもよかったです、これからも頑張ってください!!! (2020年10月4日 15時) (レス) id: 48980b5e27 (このIDを非表示/違反報告)
闇ちょこ(プロフ) - だーーっ!!((番外編は結構甘々で面白かったですぅ…もう10周してきます!! (2020年5月25日 13時) (レス) id: f89a326571 (このIDを非表示/違反報告)
ぺとるしか(プロフ) - どうしてもまたこの作品が読みたくなって、夜中サイト内を探し回り漸くたどり着きました…!!本当に大好きです…名作…!!何度も読み返したくなる素敵なお話を書いて下さり、本当にありがとうございます…(;ω;)また最初から読み直したいと思います!! (2020年5月12日 4時) (レス) id: 1ba63f4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
倉崎(プロフ) - ふぃやぁ!!!感動しました。お疲れ様でした!!!! (2019年6月30日 19時) (レス) id: 27aa211cd5 (このIDを非表示/違反報告)
山内優菜(プロフ) - 完結お疲れ様でした!これが最後なのが残念です(TT)ありがとうございました! (2019年6月28日 20時) (レス) id: 6807067b24 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:根無し | 作成日時:2019年6月9日 12時

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