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「絶対にあいつらの名前を呼んじゃダメよ?」

そう、強く聞かされて私は頷く。
「私はこれから外に出掛けるから」

「いってらっしゃいおばあちゃん」

自分を騙すための呪文のようだった

あれはおばあちゃん、おばあちゃん
言い聞かせれば言い聞かせるほど胸が苦しくなってまたうずくまって涙を流す

たすけて、はやくたすけて、こんなくらいところこわくてたまんないよ

首に繋がれた鎖も重くてたまんない。足枷も早く外したいよ




外がなんだか騒がしい。
静かな虫のさざめきや葉の擦れる音しか聞えなかったのに。

目が覚めた理由はそれだった。

やめて、やめて、期待してしまうから。

助けに来てくれるって期待してしまうから。
私は自分からあの屋敷を離れたようなもんだ。来てくれるはずがない

ああ、幻聴なのか鬱様の声が聞こえた

ぽたぽたと私の涙がみずたまり、、赤い水たまりにおちる。

バタバタと暗い地下を走る音が聞こえた。

おばあちゃん?いや、あの人は腰が悪いから走ることは出来ないはず。

蹲りながら考えているとやがてその足音は私の目の前で止まってガシャン!と鉄格子を揺らした




「A!!」

あ、きて、しまっ、た

暗闇にひかる黄緑の双眸に胸が高鳴る


「だれ」

しかし、それに反して私の口は忠実におばあちゃんの言葉を守った

「知らないんですってばぁ!!」

どんだけ強く言い放ってもゾムは鉄格子の前から動くことは無かった。
どっかいって、どっかいってよ。

わたしはみんなが大事なのに。守りたいだけなのに

ガシャンッ、

大きな音がして目の前の鉄格子が曲げられた


「俺の手を取らずにここでずっと苦汁を舐めるか、そんな泣きそうな顔をしながら俺の事を知らん知らんって嘘ついて俺に見放されるか、

俺のこの手をとって俺の名前を呼ぶか」

差し伸べられた手。

私の事、なんでそんなに?
わからない、わかりたくない。本当に?こんな私を?

涙が溢れた

「ゾム」

ああ、震えていたかな。久しぶりに呼んだ彼の名前。可笑しくなかったかな

抱きしめられて、彼の匂いがして私は安心してしまう。ゾムだ。ゾムが本当に助けに来てくれた

嬉しくて涙が止まらない







____なのに、嗚呼どうして神様



彼の後ろには杖を掲げたおばあちゃん、魔女がいた。

「逃げて、ゾム!」

抱き寄せられて次の瞬間ガツン!と殴る音が聞こえた。

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アイス! - ええ話やぁぁ、、、もしかして主さん神ですか!? (2020年10月12日 21時) (レス) id: 7b09c37ff3 (このIDを非表示/違反報告)
根無し(プロフ) - サンプルさん» サンプル様コメントありがとうございます!最高の褒め言葉です! (2019年6月10日 0時) (レス) id: 7ed1204e38 (このIDを非表示/違反報告)
サンプル - めちゃくちゃ泣けた(TωT)ウルウル (2019年6月9日 20時) (レス) id: 37598dd4c5 (このIDを非表示/違反報告)
根無し(プロフ) - 理香さん» 理香様コメントありがとうございます!完結です〜!番外編もどうぞお楽しみください! (2019年6月9日 18時) (レス) id: 7ed1204e38 (このIDを非表示/違反報告)
草が頭に生えてる人(プロフ) - 完結お疲れさまです!これから番外編も楽しく読ませていただきます! (2019年6月9日 14時) (レス) id: 63555da9ef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:根無し | 作成日時:2019年6月5日 23時

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