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「そんな怖い顔せんといて下さい。
って、今の状況で言うのも無理ありますよね」
廉はそう言うと、完全に私から距離をとり、
「Aさんが今どうやって生活をしているのか、それはご存知ですよね？」
「…えぇ、8つの頃連れられていくのを見ましたから。」
「なら、話は早い。
Aさんは、店一番の売れっ子遊女、そして私はただの客。」
それ以上の関係は、一切ありません。
そう言いきった廉。
「ほんまにそれだけですか？」
まだ少し疑っている兄。
「お兄ちゃん、ほんまやから。」
でも、やっぱり大事な人だから、誤解しててほしくない。
「信じて。
お兄ちゃんやから言う。この人、廉は、私に手を出したことなんて1度だってない。」
「え？どういうこと…」
「出会った頃のまだ子どもだった私にも、今の成長して女になった私にも。
それでも、私をそばで支えてくれていた。
だから、お兄ちゃん、廉のこと」
悪い人やと思わんといて。
でも、その言葉は廉によって遮られる。
「A、そんなみっともないこと言わんでもええのに。
客の俺がビビって、手出されへんって。」
そう、へらっと笑い、さもどうもないことを言うように言葉を繋げた。
「お兄さんも絶対言わんとって下さいね。」
そう言って、指を口の前に出した彼。
その姿はどうしようもないほど、さまになっていた。
「で、こちらの素性をわかっていただいたところで。」
その時、ふと私の顔を見た廉。
「福本くんとAさんのことを、もう少し聞かせてもらいたいのですが。」
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作者名：ゆう
| 作成日時：2017年9月6日 19時
