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「A〜、今日はなにする？？」
そう大きな声を出して入ってきたのは柊和。
この数日、ほとんど毎日来てくれている。
あの次の日早速来た柊和は、聞いていたんやろう、私の顔を見るなり顔を歪め、まるで壊れ物に触れるかのように、私の頬の傷に触れた。
「…痛い。」
「あっ、ごめん。」
そう言って、触れていた指先を離した柊和。
違う、痛いのはそこやなくて。
柊和のそんな顔を見ると、胸が痛い。
その時は、その傷から手を離しても顔を変えない私を見て柊和もまた悲しそうな顔をして。
きっと、私も柊和もどうしたらいいか分からなかったんだと思う。
もっと早く時がすぎてしまえばいいのに。
柊和といて、初めてそんなこと思った。
「ちょっと声が大きい。静かにして。」
「え〜、今日はご機嫌斜めなん？」
そう言うと、顔を柊和に覗き込まれ、彼と目が合う。
「柊和が調子よすぎるだけ。」
「まあ、俺は調子ええことだけが長所やからな〜」
なんて、笑う。
あぁ、よかった。
やっぱり笑ってる柊和が一番だとつい見とれてしまう。
「え、なに？？」
「別になんもないよ。」
「ならええけど…そんで今日はなにすんの？」
そう言った柊和に向かうように座って言う。
「今日は柊和に、お願いがある。
私に外の街を案内してほしい。」
「そんなこと？そんなん全然
「吉岡の屋敷まで、私を連れてってほしい。」
「は、」
それを発したきり黙ってしまった彼。
「…それ、本気なんやな。」
「うん。」
「…わかった。行こか。」
「柊和…」
「今日も寒いから、ちゃんと上、羽織ってくるんやで。俺下で待ってるから。」
そう言うと先に出て行った柊和。
ああ見えてきっと、葛藤しているんだろうな…
誰もいなくなった部屋で１人、
「ごめん。」
と、誰にかわからないこの言葉を呟いていた。
悩みに悩んだ末の決断だった。
けど、まさかこれが私の生き方を大きく狂わすことになるなんて、思ってもいなかった。
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作者名：ゆう
| 作成日時：2017年9月6日 19時
