２１ ページ21
あれから柊和は頻繁に来てくれるようになった。
冬が嫌いな柊和が「寒い寒い」と言いながら、こんなにも動いてくれてるのを見ると、自分がひどく情けなくなる。
どうしても迷惑をかけてる、そう思わざるえなかった。
それと反比例して、廉が来る回数が減った。
廉が来なくなるということは今までなかったからかとても寂しくなったが、上手くいっているんやろうと自分に言い聞かせた。
「大丈夫ですか？最近、かなり痩せはって…」
「大丈夫です。」
できる限り笑って返したはずなのに、せーちゃんは顔を歪めた。
「正直、今のあなたは見てられません。」
「平気です。自分のことは自分が
「大丈夫やないから言ってるんです。」
初めてこの人に責められた。
「そうやっていっぱいいっぱいになってからや、なくしてからや、遅いんです。
あの時みたいに。」
そう、ポロッと零したせーちゃん。
「え…？」
「あ。」
目が、泳いでる。
でもそれ以上に動揺しているのは、きっと私。
「なんもありません。
もともと、貧血の気があったんです。これ以上の無理は、医者としてさせるわけにはいきません。」
そう、俯いていた私の視界の中に入ってきた彼は、優しく、だけど少し強引に私の顔を上がると
「わかってもらえませんか？」
少し苦しそうに、そう答えた。
「せー、ちゃん。」
そう言うと、さらに苦しそうな顔をした彼。
なぜ彼がこんな顔をするのかわからない。私は彼のことなんにも知らない。
だから
「ごめんなさい、困らせて。
でも、ひとつだけどうしても聞きたいことがあります。」
知りたいの。
「なんですか？」
「なんで、こんなにも私のこと心配してくれるんですか…？柊和も、そうやけど、…私はあなたがたに何も出来へんのに。」
ハッと息を呑む音がした気がした。
明らかにふたりの間の空気が変わった。
「…あなたはほんまに」
「えっ？」
「Aさん…今からのことは、忘れてください。
絶対に。」
彼の手が私の後頭部を引き寄せて、でも彼にぶつかる瞬間にその力を緩め優しく彼の腕の中にしまった。
「あなたは、おってくれな困るんです。
柊和も…
そして、俺も。」
上から聞こえてくる声に顔を上げたいのに、後頭部につけられたその手がとても力強くて、動かせない。
「やから、俺は全力で守ります。」
彼の腕の中で久しぶりに涙がこぼれそうになった。
女は泣いてはいけない。
泣くのであれば、武器にしろ。
そんなこと、忘れてしまっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう
| 作成日時：2017年9月6日 19時
