４話 魚は空を飛べない ページ5
魚は空を眺めるだけだ。
あの、広く透き通った海よりも深い深い空を、
眺め、憧れることしかできないのだ。
だって、魚には羽がないからね。
＿＿＿
「お前は、それでいいのか」
赤色は唐突に質問をする。
裁縫の手を止めた彼の三白眼は私を映す。
「深海の。兄貴の代わりでいいのか」
低く唸るような声は心臓を握り締め、
つりあがる三白眼は喉を潰す。
彼は、陸を制す百獣の王の様だ。
「うん。 いいの。 それがいいの。
世界で一人しかいない片割れだもん。
守れるんだったら何でもするよ。 紅郎くんだってそうでしょ？」
１００分の１の確立。
瓜二つの容姿を持った私達双子は、奇跡とも呼べる。
男女の双子。それも一卵性。
０がいっぱいつく確立の中、私達は生まれ、互いを愛した。
それは、必然であり、当然のことなのだ。
「妹を守るためなら何だってするでしょ？」
「・・・そうだな」
片割れを守ること、
片割れを愛すこと、
片割れに代わること、
それは当然で、必然なのだ。
「私も一緒。 私が奏汰を守るのも、好きでいるのも、代わるのも、
私が奏汰の片割れに生まれてきたから。だから当然なの」
彼と双子に生まれたから、
彼の片割れとして生まれたから、
私の片割れとして彼が生まれたから、
片割れを守ることが、愛すことが、代わることが、
私達にとって「生きる意味」なのだ。
「・・・おかしくねぇか、それ」
「え？」
「依存ってやつだろ。
お前が片割れに代わったからって、何かが変わるわけじゃねぇ。
五奇人が堕ちたってことも何もかも。
夢ノ咲は・・・何もかも腐っちまたんだよ」
あぁ、私のしていたことは意味のないことだったのか。
いや、そんなことはない。
私が奏汰になることで、
私が奏汰を演じることで、
私が奏汰を守ることで、
「違う、そんなことない。
奏汰は、五奇人は、まだまだ堕ちてなんかない。
私は、私のしてることはっ・・・意味ないことじゃないっ！！」
そうだ、そうだ。
私のしてることは意味のあることだ。
彼を守って、
彼を愛して、
彼に代わって、
私は生きてきた。
いまさら、その生き方を否定されても、
私はその生き方以外を知らないのだ。
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タラレバパスタ(プロフ) - 作者様はもう既に退会なされているようで寂しい気持ちもありますが、こんなに素敵なお話に出会えたこと本当に嬉しい限りです。じわりと胸が暖かくなりました。本当にありがとうございます。 (2022年8月10日 1時) (
レス) id: 17cb558ca5 (このIDを非表示/違反報告)
深鈴 - 4年近く前の作品のようですが、胸打たれました。私の理想のままの優しくそして全てを包み込んでくれる鬼龍さんで、読んでいて幸せでした。本当にありがとうございます。 (2020年8月2日 15時) (レス) id: de6d29c8a9 (このIDを非表示/違反報告)
マリー(プロフ) - 作者さん。完結から大分たっていますがこの作品があまりにも素敵で双子ではないわたしですが双子を深く感じさせられた気分です。クラリとしてしまうような言葉の使い方ですね。素敵な作品なので想いを綴らせていただきました。見られてよかったです。 (2017年8月16日 3時) (レス) id: 5afa144aee (このIDを非表示/違反報告)
のこ(彼岸)(プロフ) - ムパさん、コメント失礼します。とても素晴らしいお話でした。完結されて長い時間が経っておられるようですが、見付けられてよかったです……ありがとうございました。 (2017年5月5日 19時) (レス) id: 8b01e5be23 (このIDを非表示/違反報告)
ユイ - 大将の小説よかったです!!!押しキャラですしね (2017年5月5日 13時) (レス) id: bd6ab93ba3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ムパ | 作成日時：2016年8月14日 21時
