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ぽつぽつとゆっくり話す私を、冨岡さんは終始無言で聞き続けてくれた。
『私は、両親が大好きでした。未だにあの日のことを夢に見るくらいには。』
穏和で物静かな父と、物怖じせずはっきりとものを言う母。
でも2人ともすごく愛情深くて、私にひたすら愛をつぎ込んでくれた。
いつかは、2人みたいなおしどり夫婦に。
そんな夢も、この鬼殺隊にいる以上叶わないけれど。
「お前のその性格は母親譲りなんだな」
『え?』
「物怖じしない人だったんだろう。きっとお前によく似た人だったんだと、話を聞いて思う」
確かに、私は物静かではないけども。
でも私結構ビビりなんだけどな。
「わかりやすい人だったんじゃないのか」
『えっ!なんで分かるんです!?母はよく周りから分かりやすいって笑われてました!』
「お前を見ていればわかる」
ふっと口元を緩める冨岡さんから目が離せない。
こんなにも綺麗に笑うのか、この人は。
「……俺にも、姉がいた。」
どこか遠くを見ながら言葉を紡ぐ冨岡さん。
いた、という事は、今はもう居ないということ。
「町でも評判の綺麗な人だった」
『冨岡さんのお姉様なら、それはお綺麗な方だったんでしょうね』
こんな美丈夫のお姉様なのだ、美人に決まっている。
「……祝言を挙げる前日、鬼から俺を守って死んだ。」
『………………そんな……』
うまい言葉が見つからない。
祝言を挙げる前日だなんて、惨すぎる。
これから先、想い合った人と生涯を共にする。
そんな幸せな日々が待っていたはずのに。
それをわかっていて尚、自分を犠牲にして冨岡さんを守ったのだ。
『…冨岡さんのことを、とても愛していたんですね。』
怖かっただろう、苦しかっただろう。
それでも、冨岡さんに生きていて欲しかったんだなぁ。
最愛の弟の命を守りたかったんだ。
「………俺の姉は、強い人だった。」
冨岡さんが零したこの言葉は、どこか自分は弱いと言っているようで。
でもね、それはちょっと違うと思うんだ。
『それは、冨岡さんが居たからだと思います。冨岡さんが居たから、強くなれた。』
きっと、自分の命より大切で愛おしい貴方が居たから、お姉様は強くなれたんじゃないかな。
私の両親もきっと同じだ。
誰よりも私を愛していてくれたから。
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きよりん(プロフ) - わらび餅。さん» 飲み会(笑)いえいえ、指摘なんて失礼しました。 (2020年7月8日 10時) (レス) id: 599608a929 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - 義勇大好きな女さん» わ〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!お読みいただきありがとうございます〜!! (2020年7月8日 6時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
義勇大好きな女 - 話終わったら、目から水が、、、!? (2020年7月7日 22時) (レス) id: 8ebef6a95a (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - きよりんさん» そうです、軟骨になってますね……笑ご指摘ありがとうございます、直しておきます……軟骨と包帯って今から飲み会でもやんのか?って感じですねすいません……笑 (2020年7月7日 5時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
きよりん(プロフ) - 31話と32話に軟骨とありますが軟膏の事ですか? (2020年7月6日 23時) (レス) id: 599608a929 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらび餅。 | 作成日時:2020年5月22日 11時