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義勇side
任務を終え屋敷に戻れば、もう日付をとっくに超えた時間。
流石に日生も起きていないか、と思いながら玄関を開ける。
この2週間ほどで、俺の心はすっかり絆されていて。
毎日出てくる美味い料理と、律儀に干してくれる布団や洗われた衣服。
極めつけは日生の底抜けの明るさだ。
ころころと変わる表情は愛らしく、彼女の尽きることの無い話は飽きない。
いつも笑顔でいってらっしゃい、と。
おかえりなさい、と出迎えてくれる彼女の存在は俺の心の支えになりつつある。
果たしてこの感情がなんなのか、今の俺にはまだ分からない。
いや、分かろうとしていなかったというのが正しいだろうか。
ふと、縁側の方から人の気配がしてそちらへ向かえば、そこには日生がぼーっと庭を眺めていて。
「……何してる」
隣に座って声をかければ、彼女はゆっくりと振り向いた。
その頬には涙がつたったような跡があって。
『おかえりなさい、冨岡さん。』
いつも通りの言葉にも、どこか悲しみが篭っていた。
「眠れないのか。」
『…はい。少し、昔の夢を見てしまって。』
昔の夢。
彼女も鬼殺の道に進んだのだ、きっと大切な人を鬼に奪われたんだろう。
いつも明るい彼女の沈んだ表情を見て、1人にしておけなかった俺は酒を持って縁側に戻る。
彼女は、戻った俺を見て少し驚いたように目を見開くと、すぐにふわりと穏やかな笑顔になった。
昔話をしてもいいか、と聞く彼女に頷き、酒を嗜む。
『私の両親は、私を庇って鬼に喰われました。父は物静かだったけれど優しくて、母も物怖じしない強い人だったんです。』
両親が大好きだったと、そう話す彼女を見て、沢山の愛に囲まれながら生きてきたんだろうとそう思う。
そうじゃなければこんなに明るく、俺のような口数の少ない男にも笑いかけたりしない。
彼女の両親が、愛情深く心優しい彼女を創ったのだ。
日生の性格は母親譲りなのだろうな。
わかりやすい人だったんじゃないのか、と聞けば、焦ったような驚いたような顔でこちらを見る日生。
『えっ!なんで分かるんです!?母はよく周りから分かりやすいって笑われてました!』
そんなの。
「お前を見ていればわかる」
分かるに決まっているだろう、もうずっとこの2週間お前のことを見ているんだから。
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きよりん(プロフ) - わらび餅。さん» 飲み会(笑)いえいえ、指摘なんて失礼しました。 (2020年7月8日 10時) (レス) id: 599608a929 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - 義勇大好きな女さん» わ〜!そんな風に言っていただけて嬉しいです!お読みいただきありがとうございます〜!! (2020年7月8日 6時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
義勇大好きな女 - 話終わったら、目から水が、、、!? (2020年7月7日 22時) (レス) id: 8ebef6a95a (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅。(プロフ) - きよりんさん» そうです、軟骨になってますね……笑ご指摘ありがとうございます、直しておきます……軟骨と包帯って今から飲み会でもやんのか?って感じですねすいません……笑 (2020年7月7日 5時) (レス) id: b794bc2212 (このIDを非表示/違反報告)
きよりん(プロフ) - 31話と32話に軟骨とありますが軟膏の事ですか? (2020年7月6日 23時) (レス) id: 599608a929 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わらび餅。 | 作成日時:2020年5月22日 11時