【鬼滅の刃】冨岡専用の隠ちゃん。【冨岡義勇】

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「……そうか。湯浴びをするならお前が先に入るといい。」






『え？いやいや、私は後でいいですよ』






湯浴びを勧めれば先に入れと言われる。






何を言ってるんだ、あなたのお世話係が先に入るわけにはいかないのに。






「………女が先に入るべきだろう。」






『えっ』






水柱様の言葉に呆気に取られる。






女、女って。






確かに私は女だけれど………ただの隠なのに。






『そんな……水柱様より先に入るわけにはいきません』






そう断れば、端正な顔立ちが少し歪められる。






「俺は水柱じゃない。」






苦々しく吐き出されたような言葉に、少し驚いた。






それはそうか。






水柱はあくまで階級に過ぎないし、彼の名前は水柱ではないのだ。






何度も何度も水柱と呼ばれればそれは嫌になるもの。






失礼なことをしてしまった。






『それでは、冨岡様、とお呼びすればよろしいですか？』






「様は要らない。」






『………じゃあ、冨岡さん？』






冨岡さん、と言うと、彼はひとつ頷いてそれでいい、と端的に答えた。






「俺はもう少し鍛錬をする。だからお前が先に入れ。」






スタスタと歩いていってしまう冨岡さんの後ろ姿を見ながら、ため息をつく。






きっと彼は何を言っても折れてくれないのだろう。






諦めて先に入ろう。






私の後に入った冨岡さんも湯から上がり、問題は寝床だ。






「ここを使うといい。」






冨岡さんが用意してくれたのは、彼の隣の部屋。






恐らく何かあった時にすぐ駆けつけられるようにという配慮なのだと思う。






本当に、優しい人。






この数時間で、冨岡さんが酷く優しい人だということに気づいた。






口数は少なく表情もあまり変わらないから分かりづらい人だけど、ただの世話係である隠を女扱い、客人扱いしてくれる。







それでいてこの端正な顔立ち。







そりゃ争奪戦が起きるわけだ。






私は騙されただけなんだけどね、後藤先輩に。






でもなんだか、この先の3ヶ月が少しだけ、ほんの少しだけ私は楽しみになってしまった。

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