17話 過去のお話 ページ17
私の両親は優しかった
勉強だって分からなければ教えてくれた
手を繋いで外を歩いた
色んなところに連れていってくれた
貴「見てみて!また100点取ったよ!」
そう言えば
笑顔で褒めてくれた
頭を撫でてくれた
私が成長して
高学年になってもその成績は変わらなかった
9歳差のお兄ちゃんも
たくさん色んなことを教えてくれた
中学受験をして私立の中学に入学した
毎日はそれなりに充実していた
テストの順位だって毎回1位だった
運動もそれなりに得意ではあった
1年生が終わって春休みだって
沢山お出かけした
2年生になったあるとき
確か5月の中旬頃
体育のとき急な目眩と動機に襲われて運ばれた
その時初めて死を意識した
13歳になってすぐの事だった
市立の中学校ならば連立方程式を習った頃だろうか
入院が決まって中学を中退した
私の知識はそこで止まった
毎日病院に来てくれた
お兄ちゃんも大学で忙しいのに足を運んでくれた
病室はとても退屈だった
その時に本を勧められて読むようになった
医療系の本がほとんどだったような気がする
人が枯葉のように朽ちていく描写は
当時の私には早かったかもしれない
明日死ぬかもしれない
眠ってしまえば
もう二度と目覚めないかもしれない
何度も眠れなかった日があった
それでも生きていられたのは支えがあったから
でもある時その支えを失った
入院から2ヶ月が経っていた
『また明日来るから』『またね』
そう言って帰って行った両親
最後まで笑顔だった
朝起きればメールが届いていて
『もうあんたは要らない』
たった1文
私の心を深く抉った
きっと一生消えないであろう傷を付けられた
『明日』なんてなかった
両親の言った『明日』はいつ来るのだろう
『明日来るから』
その明日はいつなの?
いつになれば会いに来てくれるの?
答えはわかっていた
頭は悪くなかった
『もう二度と会えない』
明日なんて来なくていい
今日のままで終わればいい
夢を奪われて
希望だって奪われて
両親までも奪うのだから
これ以上何を奪えば神様は気が済むの?
貴「これが私が『明日』とか『またね』って言葉が嫌いになったもうひとつの理由」
言い終わればマサイは私よりも泣いていた
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りん(プロフ) - とても感動しました。本当に素敵な作品でした、これからも応援しています! (2021年7月19日 12時) (レス) id: 455f01eeaa (このIDを非表示/違反報告)
*のの(プロフ) - みかんさん» 分かりました!わざわざコメントありがとうございます! (2020年11月9日 22時) (レス) id: 271830f170 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - これも残して欲しいです! (2020年11月8日 21時) (レス) id: f236b70c3f (このIDを非表示/違反報告)
*のの(プロフ) - @さん» ありがとうございます!違う作品も読んだらぜひコメントください! (2019年9月23日 9時) (レス) id: 139f9ac550 (このIDを非表示/違反報告)
@ - とても感動しました!!こんな素敵な作品を作ってくれてありがとうございました。違う作品も見てみたいです!! (2019年9月22日 22時) (レス) id: 298780871c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳴海 帆南 | 作成日時:2019年6月6日 16時