11話 ページ11
貴「退院、おめでとう」
マサイ「…ありがとな」
優しく笑いながら言う
今日でマサイも退院しちゃう
マサイ「また来るからさ、そんな顔すんなよ」
驚いて顔を上げると
奥二重の綺麗な瞳と目が合った
貴「ホント?また会いに来てくれる?」
私の声は思ったより震えていた
マサイ「そう言ったろ?毎日は無理でも、来れる日は必ず来るから」
澄んだ真っ直ぐな瞳
…彼なら裏切らないのかな
なんて、そんなことを考えてしまった
マサイ「あっ、明日の撮影来れそう?」
明日のアスレチックは以前聞いたYouTubeに投稿するものらしい
私も映っていいの?
そう聞いたら、リーダーさんであるシルクさんは素敵な笑顔で
当たり前だろ?なんて言ってくれた
貴「うん、体調もいいし行けそうだよ」
マサイ「そっか」
マサイが笑う度に心臓が跳ねる
胸の奥の方がギューッと縮まる
その感情に気が付かないふりをした
シルク「おい、マサイ!」
シルクさんの元気な声
マサイ「おう!じゃあA、明日会えるといいな!」
貴「…うん!じゃあね」
シルクさんとンダホさんの車に向かうマサイさんの背中を見て
貴「いいな、退院ができて…」
そんな事を思ってしまって頭をぶんぶんふる
そんな叶わないことを願ったって悲しくなるだけ
明日生きていることを願って考えよう
少し前までは『明日』なんて言葉を聞くのすら嫌だったのに
今では明日を考えることができるようになった
きっと明日に希望が持てるようになったから
貴「あれっ…なんで泣いているの…?」
頬を濡らす温かいもの
必死で隠して病室に戻った
どうして…
どうして?
どうしてこんなに悲しいの…?
どうしてこんなに寂しいの…?
貴「きっと…きっと、久しぶりに楽しかったから…!」
そうに違いない
橘田先生に言われた言葉を思い出して悔しくなる
貴「あと…半年、か…」
あの日聞いた言葉を思い出す
『Aちゃんは誕生日いつなの?俺は9月3日なんだ』
『私は…3月18日、です』
『へぇ、近いね!俺1月12日!』
マサイは1月だと言った
今は…6月だから…
貴「長くても…誕生日には届かない、か…」
ぽたぽた涙が溢れる
貴「教えてよ…涙が止まる方法…!お願いっ、します…誰か教えて…」
私の嗚咽は誰にも届くことなく
真っ白な部屋に
溶け込んでいった
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りん(プロフ) - とても感動しました。本当に素敵な作品でした、これからも応援しています! (2021年7月19日 12時) (レス) id: 455f01eeaa (このIDを非表示/違反報告)
*のの(プロフ) - みかんさん» 分かりました!わざわざコメントありがとうございます! (2020年11月9日 22時) (レス) id: 271830f170 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - これも残して欲しいです! (2020年11月8日 21時) (レス) id: f236b70c3f (このIDを非表示/違反報告)
*のの(プロフ) - @さん» ありがとうございます!違う作品も読んだらぜひコメントください! (2019年9月23日 9時) (レス) id: 139f9ac550 (このIDを非表示/違反報告)
@ - とても感動しました!!こんな素敵な作品を作ってくれてありがとうございました。違う作品も見てみたいです!! (2019年9月22日 22時) (レス) id: 298780871c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鳴海 帆南 | 作成日時:2019年6月6日 16時