episode20 ページ36
しかし、そんな賢二郎の行動に、俺は抵抗するように肩をぐいぐいと押した。
『離せよ…っ、賢二郎…!』
白布「お前が退部届けを離したらいくらでも離れてやる!」
『もう…っ、俺の好きなようにさせてくれよ…!!』
白布「絶対…何がなんでも、バスケだけは辞めさせねぇ…ッ!」
賢二郎は俺を床に押し倒すと、俺の体の上に馬乗りをし、無理矢理俺の手の内から退部届けを奪い取った。
『あ…ッ!』
賢二郎は俺の体の上に跨ったまま、俺に見せつけるように退部届けを真っ二つにビリリッと破く。
『……ッ、』
粉々に破かれる、退部届け。
俺の顔の上に、ひらひらと粉々になった退部届けが静かに舞い降りる。
賢二郎は眉間に深いしわを刻みながら退部届けを粉々に破くと、俺を見下ろしながら言った。
白布「……また、お前には関係ねぇ、って言うのか」
賢二郎は悔しがるように両手で握り拳を作る。
白布「前にもあったよな。お前が俺に…関係ねぇ、って言ったこと」
確かに俺は、以前に一度だけ「賢二郎には関係ない」と言ったことがある。
それは、俺が努力をしない理由について。
「どうして努力をしても無駄だって言うんだよ!」としつこく聞いてきた賢二郎に、俺は「お前には関係ない」と言った事があった。
賢二郎は今、その時と同じだと言う。
白布「関係ない、って言われるの……すげぇ傷つくんだぞ」
ふるふると震える、賢二郎の手。
白布「まるで、…お前は役に立たない、って言われてるみたいで……力不足だって言われてるみたいで……すごく、すごく寂しいんだぞ」
賢二郎はゆっくりと顔を伏せた。
しかし、俺の体の上に跨る賢二郎の顔は、真下にいる俺には丸見えだった。
俺から「関係ない」と言われて、突き放されて、すごくすごく、寂しがっている顔。
すごくすごく、悲しんでいる顔。
すごくすごく、辛そうな顔をしている賢二郎が、よく見える。
白布「俺は…力になりたいのに。和真が悩んでいたら、その悩みを解決したいのに、……どうして和真はいつも悩みを隠すんだよ…どうして和真はいつもひとりで苦しむんだよ…」
奥歯を噛み締めながら賢二郎は下げた頭をゆっくりと上げると、弱々しく眉を八の字に下げながら俺を見た。
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星 - 磯野さんの作品好きすぎて何回も何回も読んでます!更新楽しみに待ってます! (7月3日 20時) (レス) @page49 id: 9063271731 (このIDを非表示/違反報告)
尚(プロフ) - いつでもいい。待ってます。2人の幸せを繋いでください。 (6月26日 1時) (レス) @page49 id: 271ac13c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーき(プロフ) - 磯野さんの作品大好きです!!白布くん推しなのでほんと最高です!!更新すごく楽しみですが磯野さんのペースで頑張ってください! (2022年9月17日 20時) (レス) id: fc31c82ef2 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» こんにちは、彩都様!この度もコメントありがとうございます。いつも読んでくださりまして、とても嬉しいです!これからも宜しくお願い致します! (2022年8月25日 14時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - 続編,おめでとうございます!!これからの展開がとても気になります!磯野様のペースで更新してください!応援しています!(*´꒳`*) (2022年8月24日 20時) (レス) @page4 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2022年8月24日 20時