episode２０ ページ31
消え入りそうな声で言う俺の言葉に、てっちゃんは首を縦に振らない。
カタカタと震える俺の腕は、「退部届けを下さい」と言った言葉と反比例するように震え続ける。
てっちゃんは俺の震える腕を見た後、ゆっくりと俺を見上げた。
「泣きながら退部届けをもらいにくるやつは、初めてだ」
『へへ、そうでしょ』
「ああ。びっくりしてる」
『てっちゃんのことびっくりさせちった』
「……美濃」
『ねえ、てっちゃん』
「……」
『早く、退部届けちょうだい』
俺は一歩前へ進み椅子に座っているてっちゃんに近付くと、ずい、と両手をてっちゃんの顔の前に突き出した。
『お願い、てっちゃん』
てっちゃんは一向に頭を縦に振らない。
『てっちゃん、聞いてる？』
「もちろん、聞いてる」
『じゃあ早く。退部届けください』
「泣きながら退部届けをもらいにくるやつに、退部届けは渡せない」
『………意味わかんねぇよ、てっちゃん』
「俺も美濃が何を考えてるか分からない」
俺は伸ばした両腕を力無く降ろすと、ゆっくりと瞼を閉じる。
はあ、と吐き出す息さえも震えた。
『……俺、アパートに住む』
「は？」
『一人暮らしをする』
「お前、何言って…」
『一人暮らしをするには、家賃とか、生活するためのお金とかいるし…俺、部活をやめて、アルバイトをするよ』
「どうして急に一人暮らしなんて」
『うん…』
俺は目線を床に落とすと、ヘラ、と口元を緩めて力無く笑いながら言った。
『俺の居場所が無くてさ』
俺の言葉を聞いたてっちゃんは、眉間にしわを寄せながら瞬きを繰り返した。
『てっちゃん…』
俺がここにいるためには、手段はひとつしか無かった。
『俺……ここから離れたくねぇよ』
「美濃」
『九州になんて行きたくねぇよ』
溢れ出る涙を両腕で拭う。
『てっちゃんは知ってると思うけど…、俺、今…いとこの家にいて…でも、俺、ずっと…ずっといとこの家にいるわけにはいかなくて…昨日、…いとこの母さんと父さんが……俺がこの先、生活する場所について話してて…』
「九州に誰か知り合いでもいるのか」
『じいちゃんとばあちゃん…俺の父さん側の両親』
「いとこのご両親が、美濃を九州に行かせると言っていたのか」
『まだ決まったわけじゃねぇけど…そんなこと言ってて…先生とも話をするって言ってたけど……まだ何も、聞いてねぇの？』
→
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星 - 磯野さんの作品好きすぎて何回も何回も読んでます！更新楽しみに待ってます！ (7月3日 20時) (
レス) @page49 id: 9063271731 (このIDを非表示/違反報告)
尚(プロフ) - いつでもいい。待ってます。2人の幸せを繋いでください。 (6月26日 1時) (レス) @page49 id: 271ac13c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーき(プロフ) - 磯野さんの作品大好きです！！白布くん推しなのでほんと最高です！！更新すごく楽しみですが磯野さんのペースで頑張ってください！ (2022年9月17日 20時) (レス) id: fc31c82ef2 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» こんにちは、彩都様！この度もコメントありがとうございます。いつも読んでくださりまして、とても嬉しいです！これからも宜しくお願い致します！ (2022年8月25日 14時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - 続編，おめでとうございます！！これからの展開がとても気になります！磯野様のペースで更新してください！応援しています！(*´꒳`*) (2022年8月24日 20時) (レス) @page4 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：磯野
| 作成日時：2022年8月24日 20時
