episode19 ページ29
お前の父さんと母さんが、俺をこの家に引き取る事は出来ないって言ってるよ。
俺を九州に行かせようとしているよ。
────そんな事、大好きな工に言えるわけがない。
五色「和真…」
『つとむ…っ』
俺は自ら工の胸にしがみつくように抱き着くと、工は何度も瞬きを繰り返しながら俺を見下ろす。
『早く…早く部屋…行こ…っ』
五色「どうしたんだよ、和真。父さんと母さんもリビングにいるし……寂しくないよ、和真」
『違う!!!!!』
俺は廊下に響く程、大きな声を出した。
『違う……違うんだ…』
寂しい、寂しくない、の問題じゃない。
俺の居場所がないんだよ、工。
工の父さんと母さんが、ここに俺の居場所はないって言うんだよ。
俺を九州に行かせようと考えているんだよ。
やだよ、行きたくない。
俺はここにいたいんだ。
『工…、早く、部屋…早く』
五色「和真…」
工の胸にしがみつき、ふるふると体を震わせていれば、カチャ、とリビングの扉が開いた。
ギィィ、と開いた扉の隙間から顔を出したのは、工の父さんと母さん。
工にしがみつきながら泣いている俺を見た二人は、驚いたように目を開いた。
「どうしたの!和真!」
「おばあちゃん家で何かあった?」
ぬうっと、伸びてきた工のお母さんの手。
俺を心配するように眉を下げる工の両親の顔が────信じられなかった。
パシン!
俺は伸びてきた工のお母さんの手を振り払う。
当然、工のお母さんは俺から手を払われて、目をぱちくりさせた。
「和真……もしかして、今の話聞いてたんじゃ…」
『……っ、』
俺は唇を噛み締めて工の父さんと母さんを睨み付けると、その場から逃げるように階段を登る。
「和真!」
と、俺を呼ぶ工の父さんの声を無視して階段をかけ上がれば、バタン!と扉を強く閉めて工の部屋に逃げ込んだ。
ぺたん、と力無く床に座る。
喉を鳴らしながら涙を床に落とす。
どうして、どうして俺は幸せになれないんだ。
せっかく、賢二郎と掴み取った幸せなのに。
どうして、神様は俺に意地悪ばかりするんだ。
どうして。
どうしてだよ。
『幸せになっちゃ………いけねぇのかよ』
To be continued
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星 - 磯野さんの作品好きすぎて何回も何回も読んでます!更新楽しみに待ってます! (7月3日 20時) (レス) @page49 id: 9063271731 (このIDを非表示/違反報告)
尚(プロフ) - いつでもいい。待ってます。2人の幸せを繋いでください。 (6月26日 1時) (レス) @page49 id: 271ac13c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーき(プロフ) - 磯野さんの作品大好きです!!白布くん推しなのでほんと最高です!!更新すごく楽しみですが磯野さんのペースで頑張ってください! (2022年9月17日 20時) (レス) id: fc31c82ef2 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» こんにちは、彩都様!この度もコメントありがとうございます。いつも読んでくださりまして、とても嬉しいです!これからも宜しくお願い致します! (2022年8月25日 14時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - 続編,おめでとうございます!!これからの展開がとても気になります!磯野様のペースで更新してください!応援しています!(*´꒳`*) (2022年8月24日 20時) (レス) @page4 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2022年8月24日 20時