episode13 ページ3
賢二郎に「泊まっていって」なんて、言ってしまいそうになった。
賢二郎の前で、叫びながら泣きたかった。
賢二郎の前で、赤ん坊みたいに大きな声を出して泣きたかった。
賢二郎なら、俺の全てを受け入れてくれるから。
賢二郎なら、俺と一緒に泣いてくれるから。
賢二郎が一番、俺の気持ちを理解してくれるから。
でも、今はまだ、賢二郎と一緒に居られなくて。
やっぱり誰かと一緒にいると、ちょっとしんどくて。
本当は賢二郎と太一、そしてバレーボール部の監督を見送りたかったのに、見送る事が出来なかった。
しんどい。
気持ちが、前へ進まない。
どうせなら、このまま。
────死んでしまいたい。
ここ最近、全然眠れていない。
眠いのに、眠れなくて。
目の下のクマがすごい、って工の父さんから言われた。
そんなの知るか!って思ったけど、軽く笑って流した。
もう、笑うのもしんどい。
誰の顔も見たくない。
『………つかれた』
ぼそ、と独り言のように呟けば、襖を開く音がする。
五色「和真」
小さな声で俺を呼ぶ工が、申し訳なさそうに部屋の中に入ってきた。
五色「みんな、帰ったよ」
『……』
五色「俺たちももう少ししたら、一旦家に戻るって」
『工』
五色「ん?」
『賢二郎は』
五色「帰った。監督の車に乗って。川西さんも帰ったよ」
そっか。
やっぱり帰ったのか。
もう一回会いたかったな。
でも、今の俺の状態だと、会えないな。
俺は瞼を閉じると、重い腕を工に伸ばした。
『きて、工』
工はすぐに俺の元に駆け寄ると、ベッドの下に正座をして、寝転がっている俺の顔を覗き込んだ。
五色「和真、来たよ」
『うん』
五色「俺、いるよ」
『うん』
五色「ひとりじゃないよ、和真」
『……うん』
五色「和真…っ」
ほら、すぐ泣く。
工はすぐに泣くんだ。
今だって俺は「うん」しか言っていないのに、俺の顔を見て心配したのか、ぽろぽろと涙を流す。
さっきだって、通夜の途中で工のお母さんからティッシュ箱をもらい、ひくひく喉を鳴らしながら泣いていた工。
本当、泣き虫なやつ。
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星 - 磯野さんの作品好きすぎて何回も何回も読んでます!更新楽しみに待ってます! (7月3日 20時) (レス) @page49 id: 9063271731 (このIDを非表示/違反報告)
尚(プロフ) - いつでもいい。待ってます。2人の幸せを繋いでください。 (6月26日 1時) (レス) @page49 id: 271ac13c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーき(プロフ) - 磯野さんの作品大好きです!!白布くん推しなのでほんと最高です!!更新すごく楽しみですが磯野さんのペースで頑張ってください! (2022年9月17日 20時) (レス) id: fc31c82ef2 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» こんにちは、彩都様!この度もコメントありがとうございます。いつも読んでくださりまして、とても嬉しいです!これからも宜しくお願い致します! (2022年8月25日 14時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - 続編,おめでとうございます!!これからの展開がとても気になります!磯野様のペースで更新してください!応援しています!(*´꒳`*) (2022年8月24日 20時) (レス) @page4 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2022年8月24日 20時