episode18 ページ19
和真のか細い声が俺の耳に届いた瞬間、俺はパタパタと走り、和真に両腕を伸ばして抱きしめた。
ぎゅ、と両腕に力を込めて、前よりも小さく、細くなった和真の体を力いっぱい抱き締める。
和真も右腕を俺の背中に回し、うっうっ、と泣き声を漏らしながら俺を抱き締めた。
この前、和真と会った時は通夜の日で。
周りには人がたくさんいたし、なんにせよ通夜だし、こうして和真と密着する事なんて出来なかった。
でも、今は。
今は、ここに俺と和真以外、誰もいない。
やっと二人きりになれた。
やっと、こうして抱き合う事が出来た。
泣いている和真につられて俺までも泣きそうになり、目の奥がツンと熱くなるのを感じた。
お互いの体の温もりを確かめ合うように、何も言わずにしっかりと抱き締めた後、俺達の体はゆっくりと離れる。
目の周りを真っ赤に染め、ズズッと鼻水を啜りながら俺を見つめる和真。
俺は頭を傾けて和真の顔を見ると、頬に右手を添え、親指で目元の涙をゆっくりと拭いた。
ああ、和真だ。
俺の大好きな、和真。
俺が心の底から愛している、和真。
俺の恋人の、和真。
大きな目。小さな鼻と口。少し痩せてやつれた頬。
長い睫毛。薄い唇。俺を映すその瞳。
俺の知っている、和真だ。
改めて和真を見ると安心して、体から力が抜けて、表情も緩んで笑みを向けた。
和真も俺につられて小さく笑みを浮かべると、「賢二郎」と小さく俺を呼んだ。
『来てくれて、ありがと』
白布「ん」
『嬉しい、会いたかった』
白布「うん」
『賢二郎…』
白布「…うん」
今、きっと口を開いたら俺は泣いてしまう。
嬉しくて、嬉しくて、多分大きな声で泣いてしまいそうで、短く「うん」しか答える事が出来なくて。
そんな俺に気付いた和真は、右手を俺の頭の上に乗せると、ぽんぽん、と優しく撫でてくれた。
いつもそうだ。
俺が泣きそうになったり、泣いたりすると和真はすぐに察してくれて、こうして優しく頭を撫でてくれる。
和真の手が優しくて、和真の手から温もりを感じて。
俺は和真の手で、幸せを感じるんだ。
『……賢二郎に見て欲しい』
白布「! そうだ、おばあさんの日記…」
『これ…』
和真は左手で抱き締めていたノートを俺に差し出した。
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星 - 磯野さんの作品好きすぎて何回も何回も読んでます!更新楽しみに待ってます! (7月3日 20時) (レス) @page49 id: 9063271731 (このIDを非表示/違反報告)
尚(プロフ) - いつでもいい。待ってます。2人の幸せを繋いでください。 (6月26日 1時) (レス) @page49 id: 271ac13c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーき(プロフ) - 磯野さんの作品大好きです!!白布くん推しなのでほんと最高です!!更新すごく楽しみですが磯野さんのペースで頑張ってください! (2022年9月17日 20時) (レス) id: fc31c82ef2 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» こんにちは、彩都様!この度もコメントありがとうございます。いつも読んでくださりまして、とても嬉しいです!これからも宜しくお願い致します! (2022年8月25日 14時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - 続編,おめでとうございます!!これからの展開がとても気になります!磯野様のペースで更新してください!応援しています!(*´꒳`*) (2022年8月24日 20時) (レス) @page4 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2022年8月24日 20時