episode16 ページ14
涙で視界がぼやける中、ようやく探し当てた人物の名前と番号。
震える指でその番号を押せば、ノートを片腕で抱き締めながらスマホを耳に当てた。
一定の電子音が何回か鳴り響いた後、プツ、と電子音が切れたと同時に愛しい人の声が聞こえる。
白布「和真?」
少し焦った愛しい人の声────そう、賢二郎の声が、俺の耳へ届いた。
『け、……けんじろ…』
白布「和真!?どうした!?なにがあった!」
スマホの向こう側の賢二郎は、震える俺の声を聞いてものすごく焦っていて。
普段の賢二郎の声よりも、数倍大きく聞こえる。
白布「今どこにいる?家だよな?」
『ばあちゃ……ばあちゃんの日記…見つけた…』
白布「日記?日記になにか書いてあったんだな?」
『ん…っ、俺のこと、たくさん…っ、…書いてくれてる…ッ、ばあちゃん、俺のこと…』
スマホの向こう側からはバタバタと音がする。
ひくっひくっ、と喉を鳴らしながら涙を流していれば、「和真」と名前を呼ばれた。
白布「今から行く。待ってろ」
『で、も…お前部活…』
白布「ついさっき部活終わって、今から自主練しようとしてたところ。今日はもういい、今からそっち向かうから待ってろ」
『じしゅれ…』
白布「もう外出た。すぐ行く」
『賢二郎…』
白布「会いたい」
『う…っ、…んん、俺も、会いたい』
白布「一緒に読もう。おばあさんの日記」
『ん、…うん、うん、読む…賢二郎』
白布「待っててな」
『ありがと…ッ』
ぷつん、と通話が切れると、俺は情けない声を出しながら両腕でスマホとノートを抱えて涙を流した。
まさか、ばあちゃんが俺の事をノートに日記として残してくれていたなんて。
一日一日の文章は短いけれど、俺が何をして、ばあちゃんがどう思ったのかがよく伝わる。
嬉しい。とても嬉しい。
涙が溢れ出て、止まらない。
『ばあちゃん…っ』
この日記を、今から大好きな賢二郎と一緒に読むよ。
ばあちゃん、日記を書いてくれてありがとう。
俺が知らないばあちゃんの気持ち。
全てちゃんと、受け止めるからね。
To be continued
66人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
星 - 磯野さんの作品好きすぎて何回も何回も読んでます!更新楽しみに待ってます! (7月3日 20時) (レス) @page49 id: 9063271731 (このIDを非表示/違反報告)
尚(プロフ) - いつでもいい。待ってます。2人の幸せを繋いでください。 (6月26日 1時) (レス) @page49 id: 271ac13c56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーき(プロフ) - 磯野さんの作品大好きです!!白布くん推しなのでほんと最高です!!更新すごく楽しみですが磯野さんのペースで頑張ってください! (2022年9月17日 20時) (レス) id: fc31c82ef2 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 彩都さん» こんにちは、彩都様!この度もコメントありがとうございます。いつも読んでくださりまして、とても嬉しいです!これからも宜しくお願い致します! (2022年8月25日 14時) (レス) id: 017e5977a2 (このIDを非表示/違反報告)
彩都(プロフ) - 続編,おめでとうございます!!これからの展開がとても気になります!磯野様のペースで更新してください!応援しています!(*´꒳`*) (2022年8月24日 20時) (レス) @page4 id: 11dbb3cd4a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:磯野 | 作成日時:2022年8月24日 20時