【HQ／男主】この瞬間を誰よりも幸せに。３【白布 賢二郎】【リクエスト作品】

episode 15 〜4/27の真実〜 ページ13

白布「来年は、誰よりも先に俺がお前におめでとうって言う。めちゃくちゃ幸せな日にしてやる。そして、一緒に会いに行こう、和真のお父さんとお母さんに」


『……賢二郎、』


白布「一人で行ってきたんだろ？墓参り。俺も連れてって。会いたい、和真のお父さんとお母さんに」


『……ッ、』




和真は言葉を詰まらせると、眉間にしわを寄せ、顔をくしゃくしゃにしながら俯いた。




暗闇に光る粒を地面にぽたぽたと垂らしながら、和真はこくこくと何度も頭を縦に振って頷く。




────俺は、分かっていなかった。




────こんなにも、和真が辛い思いをしていた事を。




幼い頃に、両親を亡くした。




その日が自分の誕生日であり、そして、両親が亡くなった日。




その日に「おめでとう」と言われる違和感はあったはずだろう。




それでも和真は笑顔でいて、その日を「幸せな日」と言い換えていて。




こいつは──── 和真は、すごく辛い人生を送ってきたんだと思う。




おばあさんの足が悪いからひとりで墓参りに行って、朝から晩までお父さんとお母さんの傍にいたんだろう。




そこで和真は「寝ちゃってた」と言っていたけれど、本当は何をしていたのかは分からない。




もしかしたら泣いていたかもしれないし。




もっと悪く考えれば、そこで────




────歯を食いしばりながら地面に涙の粒を落とす和真に、俺は両腕を回すとそっと抱き寄せた。




小さく震えながら、声を殺して泣き続ける和真。




俺の腕の中にいる和真は、普段からヘラヘラしている和真じゃない。




バカみたいに大きい声を出して、意味不明な事を言っている和真じゃない。




先生に呼び出されていじけている和真じゃない。




今、俺の目の前にいるのは。




今、俺の腕の中にいるのは。




寂しくて、辛くて、悲しくて────本当は泣きたくて、両親に会いたくて、誰かに助けて欲しい──── 和真なんだ。





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