STORY 37 ページ19
「でも、こうして蒼井がちゃんと自分の気持ちを俺に伝えてくれて、嬉しかった。木兎さんから好かれるお前の事はムカつくけど、でも、お前の事は絶対に嫌いになれない」
『嫌いになるなよ』
「ハハ、なるわけないよ。なんか今のセリフ、蒼井らしくない」
河野は椅子を引いて立ち上がると、重いスポーツバッグを肩にかけた。
「蒼井、もう嘘とか、隠し事するのはやめにしようぜ」
『うん』
「絶対な」
『約束する』
「あと俺、木兎さんの事は諦めないから」
『…おう』
「蒼井はどうするの？結局、明日は木兎さんと花火大会に行くんだろ？」
椅子を机の下に押し込んだ河野は、俺よりも先に教室から出ようと歩き始める。
しかし、なかなか歩き始めない俺を見て、河野は足を止めると振り返った。
「蒼井？」
『俺…』
「ん？」
不思議そうな顔で見つめる河野。
俺は唇を噛み締め、黒目を左右に動かした後、ゆっくりと顔を上げて言った。
『俺、明日の花火大会は────』
*
「『ちわっす』」
河野と声を揃えて部室に入れば、そこに待ち構えていたのは、満面な笑みを向ける木兎と、無表情の赤葦。
「遅ぇぞ！」と笑いながら言う木兎の言葉に、普段と変わらずに「遅くねえし」と言い返す俺。
1年生のロッカーの前に歩み寄り、床にバッグをドサッと置き、自分のロッカーの扉を開けた時だった。
「仲直りしたんだ？」
そう声が聞こえ、隣を見てみると、俺と同じく自分のロッカーの扉を開いた藤田がいた。
藤田はロッカーの中に片腕を入れてゴソゴソと漁りながら、チラッと俺に目線を向けた。
今の質問は、きっと河野の事だろう。
藤田はきっと、心配してくれていたんだ。
フッ、と短く息を吐き、口元を緩め、目尻を垂らして柔らかく笑みを浮かべながら頷いた。
『した』
そう答える俺の顔を見れば、藤田も口角を上げて笑った。
そして、藤田の右手が俺の頭の上に乗ると、不器用なりにわしわしと髪の毛を撫でた。
「やるじゃん」
『だろ』
「次は明日だな」
『おう』
「逃げんなよ」
『逃げねえよ』
ネクタイに指を通し、シュルルッと取り外す。
俺は逃げない。
明日、ちゃんとあの人の元に行く。
自分の気持ちに、迷いはない。
「っし」と気合いを入れる声を出せば、練習着に着替え、部室を飛び出した。
ーーーーーー
to be continue…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 229人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
磯野(プロフ) - yu-kariさん» こんばんは。コメントありがとうございます。次のHQ小説の内容はまだ決まっていませんが、次回も読んでいただけましたら幸いです。よろしくお願いします。 (2018年10月29日 20時) (
レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
yu-kari - 、、、たまらん。(*´∀｀*)ﾎﾟｯ次回作楽しみ( ´Д｀)= (2018年10月29日 13時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 輝咲囚兎/ｷｻｷ ｼｭ-ﾄさん» おはようございます。コメントありがとうございます。最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございます。これからも読者様方々におもしろいと思って頂ける作品を作っていこうと思いますので、よろしくお願いします！ (2018年10月29日 7時) (レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
輝咲囚兎/ｷｻｷ ｼｭ-ﾄ(プロフ) - 最初から最後迄本当に楽しかったです！どちらのルートも応援していたのでとても胸がいっぱいです！ホントに素敵な作品をありがとうございます！！ (2018年10月29日 7時) (レス) id: 437cb76d7d (このIDを非表示/違反報告)
yu-kari - おっ、、、あっ、、、。、、、、、ぁぁぁぁあああ！、ぁぁぁぁあああ！最高ぉぉおおおお！最後まで神作ぅぅぅぅぅぅううう！ (2018年10月28日 2時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：磯野
| 作成日時：2018年10月21日 21時
