STORY 34 ページ9
藤田は俺を睨み付けると、コンビニ袋の中をゴソゴソと漁り、サンドイッチを取り出す。
透明な袋を破りながら、藤田は口を開いた。
「お前さ、なんで最近、溜息ばっかなの」
『え』
「知ってっか?溜息を吐くと、幸せが逃げていくんだとよ」
『なんだそれ』
「婆ちゃんが言ってた」
ハムとレタスが入ったサンドイッチに噛み付いた藤田は、背後にあるフェンスに寄りかかりながら言う。
「またなんか、あったんだろ」
『…別に』
「キャプテンの事?」
『……別に何も』
「河野の事か」
『しつけえな。事情聴取かよ、お前』
「そのとおり」
フン、と鼻を鳴らす藤田を見つめる。
もしかしたら藤田は、俺の異変に気付いて、今日、この場に来てくれたのかもしれない。
もしかしたら藤田は、俺の事を心配してくれているのかもしれない。
フイと藤田から顔を逸らせば、屋上に広がる白い床を見つめた。
「それってさ、俺にも話せねえ事なの?」
『……長くなる』
「なら、午後の授業サボろうぜ」
『はあ?俺、この前も河野とここで話して1時間目サボったんだけど』
「やっぱり河野関係なんだ?」
隣から顔を覗き込まれて、俺は鬱陶しいと言うように藤田の顔面を押す。
『お前、鋭いから嫌い』
「奇遇だな。俺もお前の事嫌いだよ」
『なら来んなよ』
「それは無理」
『はあ?』
片手に持っていたサンドイッチを口に詰め込む藤田。
炭酸ジュースを口に含み、飲み込んだ藤田は小さく息を吐いた。
「嫌いだけど、マジで嫌いになれねえから、蒼井の事。気にしたくねえのに、目につくし。気付きたくねえのに、お前の異変にすぐに気付いちゃうし。俺も自分でどうかしてると思うけど」
『……おかしいんじゃねえの、お前』
「俺もそう思う」
「ハハ」と目を細めて笑う藤田。
「でもさ、一人で抱えてるより、誰かに話した方が楽になれるんじゃね?」
『……』
「無理に話せとは言わねえけど、もし、話して少しでも楽になれるのならドーゾ」
藤田に話して、少しでも楽になれるなら。
藤田に話して、答えが見つかるのなら。
暫し考えた後、俺はゆっくりと唇を動かした。
『……今、悩んでる事が二つあって…』
ーーーーーー
to be continue…
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磯野(プロフ) - yu-kariさん» こんばんは。コメントありがとうございます。次のHQ小説の内容はまだ決まっていませんが、次回も読んでいただけましたら幸いです。よろしくお願いします。 (2018年10月29日 20時) (レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
yu-kari - 、、、たまらん。(*´∀`*)ポッ次回作楽しみ( ´Д`)= (2018年10月29日 13時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - 輝咲囚兎/キサキ シュ-トさん» おはようございます。コメントありがとうございます。最後まで読んで下さいまして誠にありがとうございます。これからも読者様方々におもしろいと思って頂ける作品を作っていこうと思いますので、よろしくお願いします! (2018年10月29日 7時) (レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
輝咲囚兎/キサキ シュ-ト(プロフ) - 最初から最後迄本当に楽しかったです!どちらのルートも応援していたのでとても胸がいっぱいです!ホントに素敵な作品をありがとうございます!! (2018年10月29日 7時) (レス) id: 437cb76d7d (このIDを非表示/違反報告)
yu-kari - おっ、、、あっ、、、。、、、、、ぁぁぁぁあああ!、ぁぁぁぁあああ!最高ぉぉおおおお!最後まで神作ぅぅぅぅぅぅううう! (2018年10月28日 2時) (レス) id: de93f0d8c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2018年10月21日 21時