【HQ／男主】特別が、ふたつ。４【木／兎：赤／葦】

STORY 33 ページ4

それは、河野は木兎の事が好きだから。


ただ今、猛烈アピール中だから。


「キャプテンの事」と言われれば、俺は短く息を吐いた。



『………木兎がなんだよ』

「俺、昨日、木兎さんを花火大会に誘った」



河野の言葉を聞いて、俺は瞬時に眉を寄せた。



「来週の花火大会、一緒に行ってくれませんか？って誘った」



河野の表情が徐々に険しくなる。



「そしたら、木兎さん、なんて言ったと思う？」



俺はその問いかけに答える事が出来なかった。


だって、昨日、俺は木兎から「花火大会に一緒に行こう」と誘われたんだから。


河野が木兎を花火大会に誘ったとしても、木兎はそれを断るはずだろう。


河野から真剣な瞳で見つめられながら、俺はただ唇をへの字に曲げて黙り込む事しか出来ない。



「………蒼井。木兎さん、なんて言ったと思う？」



再び同じ質問をしてくる河野から、思わず目を逸らしてしまった。


そして、呟くように小さな声で答えた。



『知らね』

「嘘だ」



河野は俺の答えを否定するように即答した。



「蒼井、知ってるはずだ」

『……知らねえよ』

「なんで俺に嘘つくんだよ、蒼井」

『…ついてねえよ』

「ついてるだろ。蒼井、木兎さんから花火大会、誘われたんだろ？」

『………っ、』



嫌な予感は的中した。


俺は何も言い返す事が出来ず、目を逸らしたまま微動も動かない。



「木兎さんに、花火大会一緒に行ってくれませんか？って誘ったら、ごめんな、って言われたんだ。てっきり俺、木兎さんに彼女が出来たと思って焦ったんだ。だから、もしかして彼女出来たんですか？って聞いた」

『アイツに女なんか出来るわけねえだろ』

「そうしたら、彼女じゃない、って。片想いしてる人がいる、って言われた」



それ、俺。


木兎が片想いしてる人とは、俺の事。


俺は溜息を吐きながら、片方の手で前髪をくしゃりと掴んだ。



「片想いしてる人って誰ですか？俺が知ってる人ですか？って聞いた」

『なんでそこまで聞いちゃうかな…』

「聞くだろ。好きなんだ、本気で好きなんだ、木兎さんの事が」



分かってる。


河野が木兎の事を心から想っている事くらい、河野を見ていれば分かる。


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