STORY 12 ページ43
なっちゃんの目の前に水色の巾着袋を差し出すと、それを見たなっちゃんは眉を寄せる。
及川「まあ、開けてみて」
チラッと俺の顔を確認したなっちゃんは、青い紐を解いて巾着袋を開くと、中から白いお弁当箱を取り出した。
『弁当…?』
及川「そう。作ってきた」
『…俺に?』
及川「……他に誰がいるのさ」
なぜ俺に?と言いたげな表情を浮かべながら、なっちゃんは弁当箱の蓋を開ける。
その中には、唐揚げとナスの煮物が詰め込まれていた。
『唐揚げとナス…』
及川「な、なっちゃんが好きって言うからね!わざわざ作ってきてあげたんだよ。この俺が、わーざーわーざ!」
『……はあ、』
及川「別に食べても食べなくてもどっちでもいいけど?でも絶対、美味しいに決まってるんだからね」
『俺、教室に自分の弁当があるんですけど…』
及川「え」
「自分の弁当がある」と言ったなっちゃんの言葉に、俺は心臓がギュッと締め付けられた。
確かに、昼ごはんの時間なんだから、自分の持ってきた弁当を食べるのは当たり前だ。
なっちゃんは普段、教室で、家から持ってきた弁当を食べている。
Twitterに写真がアップされてたから知ってる。
けれど、そこまで頭が回らなかった。
なっちゃんにサプライズ愛情たっぷり弁当を渡すことで頭がいっぱいだった。
前日からなっちゃんに、明日は弁当持ってこないでね、って伝えておけばよかった。
そしたら、なっちゃんにこんな困った顔をさせなくて済んだのに。
蓋が開かれた弁当箱を見つめる。
せっかく、お母ちゃんから教えて貰って作ったのにな。
ボツになっちゃった。
……残すのも捨てるのもお母ちゃんに悪いから、俺が食べよう。
及川「そ、そうだよね。自分の弁当があるもんね。ごめんねー、気にしなくて良いから」
そう言いながらなっちゃんの目の前から弁当箱を引き寄せようとしたとき、パシッ、と俺の手を掴むなっちゃん。
じ、っと俺の手を見つめられた。
俺の手は、慣れない料理のせいで、指先にいくつか絆創膏を貼っていた。
きっと、なっちゃんは俺の指先に貼っている絆創膏を見て、何かを察したのだろう。
『…自分の弁当があったんですけど、……えーっと、腐ってて、とても食えたもんじゃねえから、これ、食べていいですか?』
及川「え?お弁当腐ってたの?」
『腐ってた。もうカビが生えるくらい腐ってた』
.
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磯野(プロフ) - 雷雅さん» 雷雅也様、おはようございます!コメントありがとうございます。これからも更新頑張っていきますので、磯野の駄作品をこれからもよろしくお願いします! (2018年6月6日 6時) (レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
雷雅 - 更新頑張ってください! (2018年6月3日 18時) (レス) id: e8ca574508 (このIDを非表示/違反報告)
磯野(プロフ) - ハリヤヤマさん» おはようございます!以前はコメントありがとうございました!また毎晩のように更新通知を鳴らしてしまいますが、この先もどうぞよろしくお願い致します(;;) (2018年5月30日 8時) (レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
ハリヤヤマ - うわー新作だー!とっても面白そうです。かげながら応援するています。これからも沢山の小説期待しています!! (2018年5月30日 8時) (レス) id: 3d7326d260 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2018年5月29日 19時