STORY 20 ページ35
普通ならそんな不安なんて抱かないとは思うけれど、俺はその時、抱いてしまった。
「和輝」
「ん？」
「兄ちゃんに彼女できたらお前どうする？」
「え、お兄ちゃん彼女できたの！？」
真ん丸な瞳を更に大きくして驚く弟に、「ちげぇよバカ」と付け加える。
「まだ出来たわけじゃねぇけど、告白されたんだよ」
「じゃあ…もし彼女が出来たら、一緒にバレー出来なくなる…？」
「いや、出来なくなるわけじゃねぇけど…」
構ってやる頻度は少なくなるよなぁ、と心の中で呟く。
ポリポリと頬を指で掻いていると、弟は俺から顔を逸らして床を見つめた。
一点だけをただ黙って見つめる弟の横顔を見つめる。
今、お前は何を考えているんだろう。
今、お前は何を思っているのだろう。
そう思いながら見つめていると、弟はゆっくりと顔を上げて、口元に孤を描いた。
「うん、良いんじゃないかな。良かったね」
そう言いながら笑う弟の表情は、言葉とは真逆でどこか寂しそうに歪んでいた。
瞳を細くして笑ってはいるけれど、眉は弱々しく垂れ下がっている。
そんな弟の表情を見て、俺の心臓はズキッと痛む。
そして昔、俺が保育園に行っている間にわんわん泣き叫んでいた和輝を、俺が小学校に入って友達と遊ぶようになり弟になかなか構ってやれなくなったときのことを、思い出した。
あのときの寂しそうな顔をした和輝の顔を思い出すと、どうも心が傷んでしまう。
やっぱり、家族が悲しんでいたり、寂しそうな顔をしていると、俺は辛い。
「そっか」と言いながらも、俺は結局、その女の子からの告白はキッパリと断った。
小学６年生になると、小学４年の弟もバレー部に入り、同じポジションで競い合うようになった。
弟は俺の真似をしてバレー部に入っただけだけど、みるみるうちに俺よりも上手くなっていく。
それに対して悔しい気持ちはあったけれど、一切自分のことを上手いと認めない、兄よりも優れていると思わない弟に、ムカつくだとか、嫉妬心などは抱かなかった。
中学に入ってからも、普段家にいる母さんが実家に用事で帰り、父親が夜勤なため、家に誰もいないとなれば、家に弟をひとり置いておくのは不安で中学の体育館に弟を連れてきたことがある。
そのとき、みんな俺の弟を見て可愛い可愛いと言ってくれて、内心嬉しかった。
中学３年生になると、中学に弟が入学してきて、また小学生の頃のようにいじめられるんじゃないかと不安だった。
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磯野(プロフ) - 令恩さん» おはようございます！コメントありがとうございます。こういうお兄ちゃんだったら良いのになあ、という作者の勝手な想像で作りました笑ありがとうございます！また他の作品もお時間がある時に見て頂けましたら幸いです。 (2018年8月13日 9時) (
レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
令恩(プロフ) - はぁ…皇輝兄さんイケメン過ぎません？弟想いでちゃんと言う事は言うって素晴らしくないですか？これは及川が惚れるのも分からなくも無いなー (2018年8月13日 4時) (レス) id: 163bbcf1b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：磯野
| 作成日時：2018年4月10日 17時
