STORY 20 ページ33
他の部員だって練習着を床に脱ぎ捨てていたり、汗も拭かずに上半身をさらけ出してうちわで扇いだりしているくせに、俺ばかりに文句をつけてくる。
きっとそれは、及川が俺と話したくて、俺に関わっていたくて、無意識のうちに俺ばかりを見てしまっているからだろう。
今更気付いた及川のその行動に、なぜ前々から違和感を覚えなかったのかと俺自身を疑う。
「るせぇな」と、普段と何も変わらずにそう答えると、及川は「注意してやってんでしょ!」と言う。
こういう女子、いるよな。
やけに好きな人に突っかかるタイプ。
きっと及川は、そういう好きな人に突っかかるタイプの人間なのだろう。
部室の隅に置いてあるパイプ椅子に座り、はあ、と溜息を吐くと、俺の目の前に弟の和輝が歩み寄ってきた。
「帰ろう」という弟に、「おー」と適当に返事をすると、俺と弟は肩を並べて部室から出ていった。
夏が近付いているため、19時を過ぎたこの時間帯も、まだ外はそれほど暗くはない。
道路を走っている車のライトもまだついていない。
弟との帰り道は特に会話をすることはなく、俺は去年買ってもらった携帯電話を片手に操作しながら歩く。
隣を歩く弟は、ふああ、と大きく口を開いて欠伸を漏らしながら、俺の歩幅についてくるように慌しく足を動かしている。
携帯電話の画面から目線を外し、隣を歩く弟を横目で見る。
俺が今まで恋人を作らなかったのは、俺がこれからも恋人を作らないのは、ほんの少しだけ、コイツのせいだったりもする。
*
俺が2歳のとき、初めて弟が出来た。
産まれたばかりの弟を見たときは、なんだこの猿、と思ったけれど、弟がだんだん大きくなると可愛さが見えてきて、新しい家族が出来たんだなと実感した。
俺が保育園に入園すると、寂しがって弟は毎日わんわん泣いていた。
保育園から帰ると、毎日弟は玄関の前で俺を迎えてくれて、「あそぼ」と両手を伸ばしてくる。
そんな弟が、可愛くて可愛くて仕方なかった。
小学生になった俺は、新しい友達がたくさん増え、保育園に通っている弟とはあまり遊ばなくなった。
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磯野(プロフ) - 令恩さん» おはようございます!コメントありがとうございます。こういうお兄ちゃんだったら良いのになあ、という作者の勝手な想像で作りました笑ありがとうございます!また他の作品もお時間がある時に見て頂けましたら幸いです。 (2018年8月13日 9時) (レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
令恩(プロフ) - はぁ…皇輝兄さんイケメン過ぎません?弟想いでちゃんと言う事は言うって素晴らしくないですか?これは及川が惚れるのも分からなくも無いなー (2018年8月13日 4時) (レス) id: 163bbcf1b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2018年4月10日 17時