STORY 19 ページ29
咄嗟に顔を声の主へと向けると、そこには今一番会いたかったけれど、今一番ここに来て欲しくなかった男、皇輝の姿があった。
ゆっくりと足を動かして歩み寄ってくる皇輝を見て、慌てて机に残った文字を隠すように、その文字の上に筆箱を置いて隠した。
及川「な、なに!?理科じゃないの!?」
「なんで理科だって知ってんの」
及川「お前のクラスの女子に聞いて…」
「あっそ。理科の教科書貸して」
特に興味が無かったのか、俺がまだ言い終わらないうちに「あっそ」と言うと、理科の教科書を貸して欲しいと手を伸ばしてくる。
とりあえず机の上に書いた文字はまだ見られていないようだし、一刻も早くこの場から皇輝を出させたいと一心で、ゴソゴソと机の中を漁り教科書を引っ張り出した。
及川「落書きするなよ」
「しねえよ」
皇輝の手の上に教科書を乗せると、「あざ〜」と言いながら教科書を軽く振り、早々と俺の教室から姿を消した。
皇輝の姿が見えなくなると、全身から力が抜け、再び机の上に顔を伏せる。
筆箱をそっと退けてみると、その下にはしっかりと皇輝への気持ちが、マジックペンで書き残されている。
卒業まで1年も無いけれど、これから卒業の日までずっと机の上にこの文字が残っているなんて、俺の身が危ない。
気合いで消そうと思い、消しゴムを手に取ると、渾身の力を振り絞って文字を擦った。
*
(皇輝 side)
「おーいーかーわー」
移動教室から戻った俺は、借りた教科書を返そうと、教科書をパタパタと振りながら真っ先に及川の教室に向かうがそこには誰ひとり生徒はいない。
しん、と静まり返った教室の机の上に、雑に置かれた制服を見ると、きっと体育の授業でここの生徒達は体育館に向かったのだと分かった。
適当に机の中にでも入れておこう、と思い、窓際の及川の机に歩み寄る。
なぜか及川の机の上には筆箱だけがちょこんと乗っていて、制服は綺麗に畳んで椅子の上に置かれていた。
椅子を引いて綺麗に畳まれた制服の上に座り、ゴソゴソと及川の机の中に教科書を詰め込むが、なかなか入らない。
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磯野(プロフ) - 令恩さん» おはようございます!コメントありがとうございます。こういうお兄ちゃんだったら良いのになあ、という作者の勝手な想像で作りました笑ありがとうございます!また他の作品もお時間がある時に見て頂けましたら幸いです。 (2018年8月13日 9時) (レス) id: 1f5e84e895 (このIDを非表示/違反報告)
令恩(プロフ) - はぁ…皇輝兄さんイケメン過ぎません?弟想いでちゃんと言う事は言うって素晴らしくないですか?これは及川が惚れるのも分からなくも無いなー (2018年8月13日 4時) (レス) id: 163bbcf1b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:磯野 | 作成日時:2018年4月10日 17時