STORY 12 ページ44
以前、皇輝がある女子生徒から告白をされたときにキッパリと断ったように、俺も曖昧な返事はせずにキッパリと断った。
本当は俺だって女の子と遊びたい気持ちはあるけれど、今は皇輝に寄せる想いが大きくて、他の女の子達を相手にしている暇はない。
まだ俺は彼女から告白の言葉を受けていないのに、「好きな子がいる」と言い放って彼女の気持ちを断った。
俺の言葉により彼女の瞳はゆらゆらと揺れたけれど、一度瞼を閉じた彼女は小さく笑った。
「そっか。私こそごめんね。及川くん、片想い中なの?」
及川「うん、そう。好きなんだけど、なかなか気持ち伝えられなくて」
「及川くんなら大丈夫じゃない?」
及川「まあー…そう信じたいよね。でも相手がなかなか手強い人でさ。今俺が告白したら、絶対に俺はふられるからさ」
俺の言葉に彼女は「え!」と驚いたように声を漏らすと、信じられないと言ったように眉を寄せる。
「及川くんをふるような子なんているの…?」
及川「いるいる。ムカつくよ、本当」
教室に戻ろうと歩き始めた彼女の隣に肩を並べながら俺も歩き出し、彼女に愚痴を零すように肩を落とした。
「でも、今は無理でも、いつか付き合えるといいね」
やけに彼女のその言葉が俺の心に染みた。
確かに、そうだ。
今は無理でもいつか、何年か後にでも、皇輝と付き合えたらいいな。
及川「そうだね」
まだ誰も知らない未来を想像して、眉を八の字に垂らしながら小さく笑みを浮かべた。
教室に戻ると給食の準備は済んでいて、急いで自分の席に座ると、机の上に乗ってある昼食を食べ始める。
隣の席の生徒と会話をしていると、「はあ!?」と、前方から素っ頓狂な声が聞こえ、そちらに顔を向けてみると、皇輝が眉を寄せながら俺を見つめている。
どうやら、彼女から俺のことについて聞いたらしく、デートを断った俺に不満があるのか、皇輝の眉がピクピクと動いている。
文句を言いたそうな皇輝から目を逸らし、紙パックに刺さっているストローを口に咥えた。
絶対これはあとで、尋問を受けるに違いない。
皇輝の視線を感じながらも、黙り込んだ俺は黙々と給食を食べ進めた。
*
「おい!及川!」
給食の時間を終えた俺たちは昼休み時間を迎え、男子生徒達は一斉に教室から飛び出してグラウンドや体育館に走り、女子生徒達は椅子や机を引き寄せて輪になってお喋りを始めている。
.
93人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:磯野 | 作成日時:2018年4月3日 20時