STORY 6 ページ19
まるで幼稚園児みたいな答えた方に、胸の奥がキュンキュンしてしまう。
及川「そっかぁ、５年生かぁ。ならあと２年経ったら中学生なんだねぇ」
「なんでそんな赤ちゃん言葉なの、お前」
及川「小さくて可愛いから、つい」
俺が小学５年生のときは、もっとハキハキと喋っていて、活発な男の子だったけどなぁ、と思ってしまう。
しかも、こんな乱暴で野蛮な皇輝の弟とは思えないほど大人しくて、ついつい微笑んでしまう。
すると、部員のひとりが、「お前まだランドセル似合うんじゃね？」と笑いながら皇輝に言う。
それだ！と俺もその言葉に乗り、皇輝に弟のランドセルを背負うことをお願いした。
最初は眉間にしわを寄せて、不機嫌になっていた皇輝も、しつこくお願いをするとしぶしぶ弟のランドセルを借りて背中に背負う。
「ちっせ」
と、文句を言いながら渋い顔をするけれど、ごめんね皇輝、ものすごく似合ってる。
ランドセルを背負った皇輝が私服で学校に登校し、今よりも小さな机に座り、数学のことを「算数！」と言いながら勉強をしていたことを想像すると、なんだか可愛らしくてニヤけてしまう。
「返して…」と皇輝の腕をクイクイ引っ張る弟に、皇輝は「うるせえ」とちっとも優しくない言い方をしながらランドセルを背負い続けている。
もしかして、皇輝もランドセルが懐かしいのかな？
無意識のうちに口元が緩んでしまった俺に、皇輝は心の底から引いた表情を俺に向けた。
「…ブス」
及川「…は？なに？」
「お前の今の顔、すげぇブス」
及川「ブスじゃないし！生まれてから一度もブスなんて言われたことないし！」
そう、俺に初めてブスと言ったのも皇輝が初めて。
こんなに整った顔をした中学１年生なんて、俺くらいしかいないでしょ。
ランドセルを背負ったままの皇輝と、ブスと言われてムキになる俺の言い争いを止めたのも、やっぱり岩ちゃんだった。
ーーーーーハセちゃんは覚えていないかもしれないけれど、これが俺とハセちゃんが初めて会った時なんだよ。
ーーーーー
to be continue…
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作者名：磯野
| 作成日時：2018年4月3日 20時
