STORY 9 ページ7
しかし、金田一は、俺が影山を好きなことを知っていて、付き合っていることも知っている。
そして、俺と金田一は休日に遊ぶほど仲が良い友達だ。
さすがに友達の目の前で、友達の恋人の悪口を言うのは良くない。
金田一はそれを、ちゃんと分かっている。
俺と金田一の間に妙な気まずい雰囲気が流れると、俺はそれを消すように再び口を開いた。
『どっか行ってたのか？』
金田一「まあ、ちょっと。市民体育館にバレーしに」
確かに、金田一は動きやすそうなジャージを身に付けている。
背負っているリュックの中にはバレーボールが詰め込まれているのか、もっこりと膨らんでいる。
『今度行くときは俺も誘えよ。久しぶりにバレーしたいし』
金田一「……おう、分かった」
口の両端を持ち上げて笑みを作ると、幾分安心したかのように金田一も頷いて小さく笑みを浮かべた。
そして止まっていた金田一の足が動き始め、「じゃあ、明後日な」と言いながら俺にだけ別れを告げる。
軽く返事をする俺の横を通り過ぎるときに、金田一の黒目が微かに影山へ向けられた。
そして一瞬だけ睨みつけると、そのまま通り過ぎて去っていく。
金田一の背中を見送ったあと、隣に立っている影山へと顔を上げる。
影山は一切金田一へ顔を向けずに、ただ黙って前だけをまっすぐに見つめていた。
そんな影山の横顔を見つめながら、影山の制服の裾をクイッと軽く引っ張る。
それに気が付いた影山は俺を見下ろした。
『大丈夫だから』
それだけを言うと、影山は数秒間俺を見つめた後、「おう」と呟くように言う。
俺が言った「大丈夫」の言葉の中には、いろいろ含まれている。
もちろん受験のこと、そして、金田一との関係、金田一が言った言葉。
全てに対して、大丈夫、と言った。
俺は、影山は影山なりに中学の最後の公式試合のことを気にしていると思う。
誰がどう見たって、あんな拒絶をされた試合は辛い。
でも、影山だけが悪いわけではないと俺は思う。
俺たちチームメイトも、きっと、悪かったんだ。
だから影山だけが一人、悩むことじゃない。
『帰ろう』
そう言って、俺は影山の家の方へと歩き出す。
影山も俺につられるように来た道へと体の向きを変えて、隣に並んで歩き出した。
ーーーーー
to be continue…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：磯野
| 作成日時：2018年3月15日 22時
