STORY 15 ページ44
「痛ッ！」と言いながら叩かれた膝を隠すように、投げ出した足を引っ込める。
国見「嘘つき」
『な、にが』
国見「いいと思ってないくせに。寂しいくせに。ハセの嘘は分かりやすい」
また、俺の嘘がバレてしまった。
まるで、兄のようだ。
国見「でもまあ、ハセが言いたくなったら言って。言いたくなければ言わなきゃいいし。任せる」
無理やり聞かないところが、国見のいいところだろう。
真っ直ぐ前を見ながら言う国見に、俺は「うん」と短く返事をした。
二駅目、俺たちの最寄り駅に到着すると電車から降りて改札を抜ける。
改札横に最近できたばかりのパン屋から、小麦の香ばしい匂いが鼻を掠めて食欲が沸く。
家に帰ったら母がいるだろうし、パンケーキでも焼いてもらおう。
再び国見と他愛の無い会話をしながら、 自宅に繋がる道を歩き始めた。
すると、紅色のジャージに身を包んだ、高身長の男の子が前方から走ってくる。
肩には布を盛り上げた袋がかかっており、走る度にゆらゆらと袋が揺れる。
特にその人物を気にせず歩いていたが、俺たちの距離が近付くにつれて、その人物が誰なのかハッキリとわかった。
その人物は、影山だった。
影山だと気付いて足を止めると、影山も俺の存在に気付いて足を止める。
ハアハア、と息を切らしながら影山は俺を見下ろし、俺は黙って見上げた。
影山「長谷部、今帰りか」
『…うん。どこ行くの？市民体育館？』
影山「おう」
また、だ。
影山はまた、これから市民体育館に行って、一人でバレーの練習をするんだ。
それ以上何も言わない俺から目を逸らし、影山はチラッと俺の隣に立っている国見を見る。
国見もしっかりと影山を見つめていたらしく、ぱちん、と目が合うと、影山は少々気まずそうに顎を引いた。
影山「……久しぶり」
国見「うん、久しぶり」
金田一よりかは国見の方が幾分話しかけやすいのか、小さい声だけれど影山から国見に話しかけた。
そして、再び俺へと顔を戻した影山は、肩にかけている袋をかけ直して口を開いた。
影山「じゃあ、行ってくる」
その言葉に俺は、コクリと頷いただけ。
風を切るように走り出した影山は、俺の横を通り過ぎる。
影山が地面を蹴って走る音が小さくなっていく。
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作者名：磯野
| 作成日時：2018年3月15日 22時
