STORY 15 ページ43
嘘でも、遊んでる、だなんて言えなかった。
黙り込んでいる俺に、国見は心配そうに眉を寄せて表情を曇らせた。
国見「……もしかして、影山と別れたの？」
『…いや、別れてはない、けど』
国見「…けど？」
連絡がなかなか来なくて寂しい、だなんて女々しすぎて言えない。
言いかけた言葉をゴクンと飲み込み、頬をポリポリと指先で掻きながら小さく笑った。
『最近影山、忙しいみたいでさ。あんまり連絡取れてないんだよね。忙しいのは仕方ないから、待ってるんだけど。待ち遠しくて』
国見「影山って結局、白鳥沢じゃなくて烏野に行ったんだっけ。烏野ってもう部活始まってんの？」
『いや、まだだけど』
ちょうど駅に到着し、鞄から定期券を出して改札を通る。
ホームには俺たちが着ている青葉城西高校の制服を身につけた生徒達が、電車をまだかまだかと待っていた。
『……市民体育館に、行ってるっぽい』
国見「何しに？」
『バレーしに』
国見「あー……好きだよな、バレー」
両手をポケットに突っ込み、靴の先でホームの地面をゴリゴリと削るように擦る。
その行為に何の意味もないけれど、何かをして気を紛らわせていないと、次から次へと影山に対する不満が口から出てしまいそうだった。
ホームにリズミカルな音楽が流れ、電車の到着を知らせる。
風を切りながらやってきた電車がちょうど俺たちの目の前で止まり、プシューッと音を響かせて扉が開いた。
窓に沿うように置かれている長椅子に、隣同士に腰を降ろして座る。
再び、プシューッと音が響いて扉が閉じると、ゆっくりと電車は動き始めた。
国見「ハセは、まだ好きなの？影山のこと」
その問いかけに、顔を俯かせたままコクリと頷く。
頷いた俺を見ては、「そっか」と呟くように国見は言った。
国見「……なんかあったら言いなよ、俺に。聞くから」
『うん、……でも、学校が離れると仕方ないよな。会えなくなるし。部活で忙しくなるし。こうなるとは薄々分かってたから、別にいいんだ』
電車の床に足を投げ出して俯かせていた顔を上げ、ははっと笑いながら天井を見上げる。
そんな俺を見て、国見は片手を俺の膝へと伸ばし、ベジッと膝を強めに叩いた。
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作者名：磯野
| 作成日時：2018年3月15日 22時
