STORY 14 ページ38
口端を持ち上げて表情を引き攣らせながら、俺は説明をし始めた。
『中学２年の夏の大会で、２回戦目のときに戦った相手校のセッター。ほら、ネット際で影山とボールを押し合いしたときに、身長差で負けたヤツだよ。覚えてない？』
中学２年の夏の大会、２回戦目。
中学２年の時点で170センチを超えていた影山に対して、160センチ程度だった名倉は、ネット際でボールを押し合いしたときに身長差で負けてしまった。
あの時、名倉が悔しそうにネットに掴みかかり、よく分からない言葉を叫んでいた記憶がある。
そう説明をすると、金田一と国見はなんとなく覚えていたのか、「ああ」と頷いた。
国見「元敵だったやつが、ハセの友達になったんだ」
『まあね』
国見「ハセにも友達できたんだね。すごいすごい」
『バカにしてんのかよ』
目を細めて国見を睨みつけると、二人の間に立っていた名倉がキョトンとした表情を作る。
そして、国見と俺の顔を交互に見ては、再び笑顔を向けて口を開いた。
「なになに、お前、ハセって呼ばれてんの？」
『え？まあ、うん』
「それ良いじゃん！俺もハセってよーぼう！」
名倉は独特のリズムに合わせて、「ハセ」と俺の名前を連呼する。
教室に響き渡るその声に恥ずかしさが増し、周囲をキョロキョロと見回しながら「騒ぐなよ！」と名倉に向けて注意をする。
しかし、名倉はやめることはなく、楽しそうに俺の名前を連呼し続ける。
すると、「ねえ」と低い声が響き、俺はその声の主へと顔を上げる。
名倉も俺の名前を連呼し続けていた声を止め、その低い声の主へと顔を向けた。
国見「うるさい」
「ねえ」と言った低い声の主は、国見だった。
いつもは半分閉じかかっている眠そうな瞳が、今だけ鋭く尖っている。
こんな国見、見たことない。
金田一もそんな国見を見たことが無かったようで、ポカンと口を開けて黙って見つめていた。
国見「ハセって呼んでいいのは、元北川第一のバレー部だけだから」
「…？そんな決まりがあんの？」
国見「ある」
「えー、意味分かんねえ。じゃあ俺は、和輝って呼ぼうかな」
国見「は！？」
珍しく国見の声が裏返る。
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作者名：磯野
| 作成日時：2018年3月15日 22時
