STORY 13 ページ33
なんというか、この名倉という人物は人懐っこくて、人見知りしない性格だと感じた。
でも、悪いやつではないと思う。
俺に恨みも持っていないようだし、これから同じチームでバレーをしていくんだし、仲良くしていこう。
背中を叩く名倉に、「痛いから」と言いながら小さく笑った。
名倉と会話をしている間に、教室の前扉からは「席につけー」と語尾を伸ばしながら赤いジャージに身を包んだ小太りの教師らしき人が入ってくる。
廊下で騒いでいた生徒達も教室に入り、俺も自分の席に座る。
すると斜め後ろから、「長谷部、長谷部。俺ここの席な」と小声で自分の席をアピールしてくる名倉。
教師が黒板前に立っているというのに、自由気まま過ぎて笑ってしまう。
コクリと頷くと、教師は今日の入学式について説明をし始めた。
これから廊下に出席番号順に並び、体育館に向かうらしい。
パイプ椅子にそれぞれの名前が書かれている小さなテープが貼られているから、それを目印に座りなさいと伝えられた。
なんとなくイメージが出来て、教師の合図により廊下に出席番号順で男女二列ずつに並ぶ。
そして前方の生徒達が動き出すと、俺も前の生徒についていくように歩き始めた。
いよいよ、青葉城西高校の入学式が始まる。
再び緊張感が溢れ出てくるけれど、それよりも、青葉城西高校の生徒という実感の方が大きくて胸がワクワクする。
体育館の入口前に並び、みんなは静かに深呼吸を繰り返す。
ここは薄暗くて、今現在、体育館の中がどのような状態になっているか分からない。
体育館の中から小さくアナウンスの声が聞こえる。
体育館の入口の扉に耳を傾けていた教師はそこから耳を離すと、閉じていた扉を一気に開けた。
そこから差し込んでくるライトの明かりが俺たちを照らす。
そして、赤いカーペットの上を、さくらをイメージしたBGMと共に一歩ずつゆっくりと歩き始める。
体育館の中へ足を踏み入れると、２年生と３年生の先輩達がパイプ椅子に座り拍手をしながら俺たちを見つめている。
そんな先輩達の奥には保護者の方々も来ていて、先輩達と同様に拍手をしていたりカメラのシャッター音が聞こえる。
恥ずかしけれど、とても嬉しい。
少し頬を赤く染めて唇を噛み締めながら、歩き慣れていない赤いカーペットの上をゆっくりと歩き続けた。
*
入学式が終わると教室に戻り、教師が戻ってくるまで教室の中はザワザワと騒いでいた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：磯野
| 作成日時：2018年3月15日 22時
