STORY 13 ページ30
そんな俺の視線に気付いたのか、国見は目だけを俺に向けた。
国見「緊張してるでしょ」
『べ、…別に？』
国見「ハセってこういう時いつも緊張するよな。部活の自己紹介の時とか、試合前とか」
『試合前は誰だって緊張するだろ』
国見「そう？俺は緊張しないけど」
『なんで？』
確かに、試合前に緊張している国見を見たことがない。
いつも瞼が半分しか開いていなくて、隙があれば欠伸をしていて、眠そうな表情をしている。
そんな国見に眉を寄せて問いかけると、国見は俺の目をしっかりと見て言った。
国見「ハセがいるから、緊張しない」
その言葉と、しっかりと俺の目を見つめる国見の表情に、ドキンッと心臓が大きく揺れる。
なんだか、普段の国見の表情とは少しだけ違っていて、とても真剣に言っているように見えた。
黙って国見を見つめる俺に、国見は口端を持ち上げて薄らと笑う。
国見「自分より緊張してる人を見れば、自然と緊張しなくなるんだよ。だから緊張しそうな時は、既に緊張してるハセを見てる」
『なんだそれ。俺だって緊張したくないのに』
国見「俺のために緊張して」
『嫌だ』
「ケチ」と国見は呟き、俺の肩に自分の肩をぶつけてくる。
それに対し、「ケチじゃないし」と言って、俺も国見の肩に自分の肩をぶつけた。
顔を見合わせてケラケラと笑う俺と国見。
なんだか、高校でもやっていけそうな気がしてきた。
青葉城西高校の校門を潜り、玄関へ向かう。
玄関前には白い紙が6枚貼られていて、すぐにそれがクラス表だということが分かった。
必死に自分の名前を見つけ出そうと黒目を動かすけれど、なかなか見つけることができない。
受験発表のときもそうだった。
自分の受験番号や名前を、どうも見つけ出すことが苦手だ。
クラス表の前に群がる新入生と一緒に睨みつけていると、「ハセー」と俺を呼ぶ緩い声が聞こえる。
声の主へ顔を向けるように首を伸ばすと、国見が俺に向けて手招きをしている。
群がる新入生を掻き分けて国見の元へ行くと、「あったよ」と、紙を指差す国見の指先に目線を向ける。
そこには、俺のフルネームである「長谷部 和輝」の文字と出席番号が書かれてあった。
目線を上げて組を確認すると、４組と太字で書かれている。
『国見も？』
国見「俺は６組」
ああ、離れてしまった。
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作者名：磯野
| 作成日時：2018年3月15日 22時
