STORY 13 ページ29
道路を覆っていた雪の姿も消え、灰色のコンクリートが全面に敷かれている。
温かいなあ、と思いながら歩き続けていると、ちょうど影山の家の方向と、駅の方向に別れる道に辿り着いた。
影山の入学する高校も、今日が入学式だと言っていた。
確か、烏野高校の制服は学ランだったはず。
影山のブレザー姿を想像すると、ネクタイがきちんと結べていなくてだらんとしており、シャツもズボンからはみ出している姿が浮かんだ。
ぷっ、と吹き出して笑ってしまう。
『…会えないか』
偶然ここで会えるかなと期待をしてみたけれど、やっぱり会えるはずがない。
そのまま駅の方へと体の向きを変えて、春の陽気を浴びながら歩き進めた。
駅に着いて改札を通り、電車に乗って二駅目で降りる。
改札から抜けると、そこには俺と同じ制服を着た学生達で溢れ返っていて、この人達全員が青葉城西高校の学生だと知る。
その中でもまだ幼さを残していて、どこか緊張感が漂っている学生達は、きっと俺と同じ新入生。
その緊張した表情を見ると、なんだか俺まで緊張してきてしまう。
顔を前へ戻して、ふう、と細く息を吐き出すと、前方に見覚えのある姿を見つける。
春の風にサラサラと泳ぐ髪の毛に、少し猫背で、ゆっくりと歩くその姿。
時折顔を背けて、大きく口を開き欠伸を漏らすその横顔は、紛れもなく国見だ。
『国見！』
そう叫びながら小走りで駆け出すと、呼ばれた本人は足を止めて振り返り、俺だと分かると柔らかく口元を緩めて笑みを浮かべた。
国見「おはよう。似合ってないよそれ」
『う、うるさいな。似合ってないのは今だけだし』
制服の似合わなさを指摘されてムスッと唇を尖らせると、国見は眠そうな表情のまま小さくフッと声を漏らして笑った。
「冗談だって」と、膨れる俺に言うと、俺の隣に並んで歩き出す。
国見と会うと、一気に俺の体から緊張感が抜け、なんだか中学の頃に戻ったように感じた。
中学の頃もこうして、朝に登校中の国見を見つけては声をかけて、二人並んで登校したのを覚えている。
そんな俺たちを見かける周囲の女子達からは、「あんた達って仲良いよねー」「いつも一緒じゃない？」と言われたことが多々あった。
チラッと隣にいる国見を見ると、中学の時と何ら変わりのない表情をしている。
緊張感が一切感じられない。
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作者名：磯野
| 作成日時：2018年3月15日 22時
