78 続 ページ15
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「相手は鬼だよ？私たちを殺すためなら何だってしてくる。
どんな汚い手や、血鬼術を使ってくるかも分からない。奴らには卑怯も何もありはしない。
……私が鬼なら…」
木刀の切先を、杏寿郎様の左目の眼帯に向ける。
「弱点と分かる左目から狙う。………それとも、」
僅かに刀先をそらして、今度は右目を指した。
「もう片目も潰して絶望させてから、なぶり楽しむかなぁ……。
………どう思います？杏寿郎様」
残虐な鬼が相手なのなら、何が起こってもおかしくない。
「聞いたか？」
「……なぶる…」
「怖いよ…」
「恐ろしい女だ」
「元柱に向かって…」
ん？あれれ、なにこの空気。気まずいな？
みんな怯えてる？
経験からの私的な考えを言っただけなんだけど…ドン引きされた？
…ちょっとやりすぎちゃったかな…？
怖がらせてどうする、って怒られちゃうかと思いきや、杏寿郎様を見ると顔が上気しているのが分かる。
口の端もにんまり上がっていて…もしかして喜んでる？？
なんで喜んでるの？
「優しさだけでなく、厳しさも持ち合わせているのか………やはり俺の目に狂いは無かった、完璧だ…！」
なんか言ってるし。
どうもまた変なところで興奮してるなこの人。
「Aの言う通りだ、鬼はどんな手を使ってくるか分からない。罪のない人々を襲い、手負いから容赦なく殺そうとするような奴らだ！
決して油断をするな！…隙も見せるな！」
どよめきの収まらない若手たちに、杏寿郎様は呼び掛けてくれた。とりあえず私の意見に賛同してくれてるみたい。よかったぁ。
ブンッと、刃についた血をはらうように木刀を大きく振ると、杏寿郎様もこちらを向きながらまた構え直した。
にんまりしていた口元は引き締まり、いつもの真剣なお顔に戻っている。
「さてA、続きをしよう。後輩の手前だ、手加減するなよ」
「そのつもりです」
相手は元柱だ。全力でかからなければ、他の隊員のようにあしらわれて終わりだろう。
可能な限りの力と速さで地を蹴り、また杏寿郎様に挑みかかった。
これで勝てたらすっごい格好良かったんだけどね。
残念ながらそうはいかなかったよ。
一本もとれないどころかボコボコにされただけだったから、やっぱり杏寿郎様は強くて格好いい。
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作者名：皿 | 作成日時：2022年10月2日 15時
