78 とびかかる ページ14
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「迷うな！どんどん掛かってこい！！」
う
木刀を手にし威勢のよい杏寿郎様に、同じく木刀を手にした隊員達が斬りかかっていく。
今度は杏寿郎様を相手にした鍛練のようだ。
「へぶぅ！！」
「うわぁあ！！」
真正面から、後ろから。
一人で二人組で、あるいは複数人で同時に斬りかかるのだけど、杏寿郎様は持ち前の俊敏さで難なくかわしては叩きのめしていく。
すごいな。片目を失っていても、刀技の一切に衰えを感じさせない。
「あのう…これは私も加わってよいということでしょうか…？」
私の手中にはみんなと同じように木刀が。
配られたのを、なんとなく受け取っちゃったんだよね。
「もちろんだとも！！遠慮なく来るがいい！！」
「では…」
気前よく杏寿郎様が許可をくださったので、遠慮なく掛かることにした。
もうここまできたら、ガッツリ鍛練に参加しちゃえ。
「──すぅ、」
呼吸を整え体を低く構えると、地面スレスレの高さに身を保持したまま、獣のような素早さで杏寿郎様に向かって行く。
真正面…ではなく、眼帯をしてる左目の側から突っ込んだ。
ほぼ死角になるからね。
「！！」
左目を狙って真っ直ぐ突き上げた木刀の先が、寸でのところで弾かれた。
自らの木刀で攻撃を弾いた杏寿郎様は大きく後ろに飛び退く。地についた足元から土埃が僅かに舞った。
余裕めいていた右目の赤が、緊迫の色を含み険しさを増す。
「………」
「………」
無言で睨みあった一瞬に、私たちを囲む隊員達からどよめきが上がった。
「今の見た！？」
「あいつ、手負いなのを分かってて左から狙いにいきやがった！卑怯だぞ！！」
卑怯だの道理が無いと非難の声に混ざって、特に猪頭がやかましく騒いでるのが耳につく。
興奮と苛立ちに、いつかの野犬に向き合った時のように背中がざわざわと波立った。
「卑怯？」
木刀を構え直して立ち上がった。
じろっと、表情の読めない猪頭を睨んだ。
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作者名：皿 | 作成日時：2022年10月2日 15時
