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拾漆 ページ18
「Aちゃん指名来たから
お客様のところ行って来て頂戴。」
『分かりました。ですがこれ後少しで終わるので』
「お客様は何があっても待たしてはいけない
この仕事は愛にやらせるから」
あと少しだったから終わらせたかった
そうやりたかった
お客様に向かい行っていた時に愛とすれ違ったので
『御免…続きお願いします』
そう伝えると不満そうな顔をして
自分のことを愛が睨んできたのに気付きながらも
気付いていないふりをして
その場から離れた
☆ ☆
そのお客様が帰られた後にこの日
初めて他の店屋の花魁を見た
見たのは
ときと屋の「鯉夏花魁」
萩本屋の「蕨姫花魁」
この二名だった
京極屋は女将であった「お三津さん」が急に不慮の事故と
言われているので亡くなったため今は少しばかり
落ちていっていると言われている店だった
鯉夏花魁は素晴らしい人だと思った
新たにこの街に入ってきた私の
敵に当たる店で働いている私にでさえ
自分の店の可愛い子のように
接してくれた
蕨姫花魁は
独特な雰囲気を纏っていた
人間ではない気配
ここに潜む鬼はこの鬼だ
そう思えた
私は今すぐに行動を
起こすのではなく
今はまだ我慢する時だ
もしかしたら師範の奥さん方の居場所を
突き止めることが
出来るのかもしれない
そう思い
静かにその時を待っていた
このまま早めに
片を付けていたら……
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作者名：ワンワン | 作成日時：2021年7月31日 17時
