彼女は恋敵と対面した。 ページ6
目を開いて辺りを見渡すといつも通りの私の部屋。
しかし気分は全くいつも通りじゃない。頭はガンガンに痛いし気持ち悪い。そこで昨夜とんでもない量のアルコールを摂取したことに気がついた。ん？でも私は昨日食堂でそのまま＿＿
「 おはよう、目が覚めた？ 」
「 んっえっ！！？あっ、ま、マスターさん！？ 」
勢いよく起き上がると思い出したように頭痛がきて片手で頭を抑える。マスターさんは大丈夫？と心配そうに頭を撫でてくれた。それはもう愛娘に触れるかのように優しく。お母さんみたい。
＿＿いやいやなにほのぼのしちゃってるの私！！？
この人は一応恋敵に当たる人でいわばライバル。この人からシャルルさんを奪いたいってあの時たしかに思ったんだ。
「 ま、マスターさん！ 」
「 ん？どうかした？ 」
「 あ、えと、その＿＿シャルルさんを奪って、もいい、です、か？ 」
マスターさんは目をぱちくりとさせる。
最後の方自信のなさを主張するように声を小さくしたのとか疑問形になったのは突っ込まないでほしい。だって口が勝手に開いちゃって喋ってる最中に我に返ったんだもん。
彼女はえっ、と驚きの声を漏らした後顔全体を真っ赤にさせた。
「 えっ、な、なんでシャルルが！？えっ、あ待って奪うって言った？？うそ、それは、やだ...ってあっ、待ってやだ私、シャルルを自分のもののように言って！！ 」
「 ま、マスターさん！落ち着きましょう！はい、吸ってー吐いてー 」
私が言うように彼女は深呼吸をする。ずいぶん素直な人だ。マスターさんは手の震えをなくそうとそっと自分の手を撫でる。彼女のきっと綺麗であろう手は手袋によって隠されてしまっているが。
「 マスターさん、はシャルルさんのことこう、そういう意味で好き、なんですよね？ 」
「 ...うん、そうだよ 」
「 告白とかは＿＿ 」
「 彼は、シャルルはね元はショーケースに飾られていた美術品なんだよ 」
＿＿私と彼は違うんだ。
マスターさんの寂しそうな声が床に向かって落とされる。彼女はスリスリと自分の手の甲を撫でる。そこには薔薇のような傷跡、があると噂で聞いたことがある。彼女は、彼女にしか使えない力で貴銃士たちを呼んだんだという。
マスターさんからしたらその傷は自分とシャルルさんが違う者だという"証明"みたいなものなのかな、って考えてしまう。
「 気高い彼と普通の人間の女の私、天秤にかけたらどうなると思う？＿＿釣り、合わないでしょ 」
自嘲するかのようにマスターさんは掠れた声で言ったんだ。彼女はきっと目に溜まってるそれに気づいでもいない。
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作者名：ユキ香 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年7月29日 3時
