愛をこめて。

なくなりそうで怖いよ ページ41

「…A？どうしたの？具合でも悪いの？」



心配そうなジニョンの声に、窓の外に向けていた視線を彼の方に向ける。


…これが最後になるのかも。

いや、最後にしなきゃいけない。


そう思うと胸が痛くて耐えきれなくて思わず俯いて、膝の上に乗せている両手を強く握りしめた。



「…もう疲れた」



そう声を出す。ジニョンの顔を見るのが怖くて顔を上げることができなかった。



「…なにが？」


いつもより低いジニョンの声。迷いと不安が伺えた。



ああ、胸が痛いよ。



「…私、しつこい男が嫌いなんだ。

例えば、朝、アパートに来る男。

バイト帰りに、迎えに来る男。

知らない人と一緒に帰るなって言ってくる男。


…ここまで言えば、わかるよね？」



こんなに嘘をつかなきゃいけない。胸が痛い。

ジニョン気づいて。今言ったことは全部、全部嘘だから。



ジニョンのことが大好きなんだよ。



「…まって、どういうこと？」


「物わかりが悪いなあ」



言いたくないよ。

…でもジニョンのためなんだ。



「…ジニョンと一緒にいるのが疲れたってこと」



しばらく、沈黙が流れる。空気がすごく重くて私は溢れ出しそうな涙を堪えるのに精一杯だった。



「…うそ、つかないでよ。

何を隠してるの？

正直に言ってよ。何年一緒にいたと思ってるの。Aが嘘ついてるなんてすぐにわかるんだよ」



ああ、ジニョン。


やっと、顔を上げてジニョンを見る。

そんな切ない顔しないで。


すべて、ジニョンに話したい。抱えていること、隠していること全て。



でもそれをしたら傷つくのはジニョンだ。



だから私は、嘘をつかなきゃいけない。

たとえ、ジニョンが傷ついたとしても。

傷つかないために、傷つけなきゃいけないなんておかしいかもしれないね。

でも、それが私が導き出した最善の方法なんだよ。


だからジニョン、ごめんね。



「嘘なんてついてない。

『何年一緒にいたと思ってるの？』

笑わせないで。たかが２年でしょ」



たかが２年なんかじゃない。大切な、２年だった。



「…俺の、何が悪かったの？」



何も悪いとこなんてないよ。

こんなに胸は痛い時でも笑顔を浮かべられる自分が憎かった。



「その、女々しいとこ」



その、やさしいとこ。



「すぐ泣くとこ」



涙もろいとこ。



「しつこいとこ」



おせっかいなとこ。



「内面、全部」



抱えてるもの、全て。



「大っ嫌い」



大好きなのに。

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