Wanna be your sweetie.��

222. ページ27

>Fukazawa side.





……え、寝てる？




スクリーンの光に照らされたAの横顔は、知らぬ間に眠りについていて、首が少し舟をこいでいる。


さっきまで泣いていたかと思えば今度は寝てるって。


Aは意外と感動モノに弱いってことは前に家に泊まって2人で映画を見た時に思ったけど、

今回の映画も見ながらボロボロ泣いてるから、そんな彼女を見て途中で笑いそうになった。





『……っぶね、』


Aの首がぐらりと揺れて、俺の方から離れて行く。

彼女の頭が隣の席の方に倒れていく直前に、咄嗟に出した手でAの頭を支えた。

掌に、Aの柔らかい髪の感触。




……どうしようか。


俺の右手にはAの頭。

だけどこのままずっとは流石に無理だ。

身体の半分を彼女の方に向けてるこの状況じゃ、映画は見れない。




……仕方ないよな、


起こさないようにゆっくり彼女の頭を動かして、俺の左肩にもたれさせた。

肩にAの頭分の重みがかかって、ふわりと女っぽい柔らかい匂いが香る。




全く起きる気配のない彼女は、時折「ん、」と小さく声を漏らして、さらに俺に体重を預けた。




…あ、ダメだこれ。全然集中できない。


さっきから、Aが気になって目の前のスクリーンを流れる映像が、頭の中をスーッと通り抜けていく。



Aの頬に落ちた彼女の髪を、指の先でそっと払う。

安心しきった顔で眠る彼女の表情には、さっきまでの緊張した様子はない。

目尻には泣いた跡が残ったまま。



…ガッチガチだったからな、今日。

それはもう思い返せば笑ってしまいそうになるほど。


駅で待ち合わせをした時も、隣を歩いていた時も。
緊張してんのが俺に伝わるくらい固い表情だった。



俺の肩にもたれたAの顔を見れば、睫毛の影が頬に落ちて、……あ、笑った。

どんな夢を見てるのか知らないけど、ほんの少し上がった口角に、俺も思わず頰が緩む。





…早く言ってくんねーかな、俺のこと好きって。


別に俺から言っても良いんだけど、こうなったら言わせたいよね。

どんな顔でどんな風に俺に好きって言ってくるのか、見てみたい。




そんな俺の企みに気づいてない彼女は、数センチの距離の中で無防備な寝顔を晒した。



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