143.* ページ46
.
「あれ、お前そんな格好してどこ行くの？」
『祭り。』
「へぇ、そんな女っぽい格好してんの珍しいじゃん。」
『…あー、彼氏と行くから。』
「は！？彼氏！？」
彼氏、って慣れない言葉がちょっとむず痒くて、
どういうことだよ、と慌て出したお兄ちゃんを無視して家を出る。
慣れない浴衣に戸惑いながら、佐久間と待ち合わせした駅前の公園に急いだ。
『大介、』
少し背の低いその後ろ姿に声をかければ、ゆっくり振り返った佐久間。
私を視界に入れると固まって動かなくなる。
『言われた通り、着てきたよ。』
佐久間に浴衣着てきて欲しいって言われたから、少しでも叶えてあげたくて。
佐「…あぁ、もう！」
『え、なに？』
私の腕を掴んで引き寄せると、佐久間は真っ赤な顔で私を抱きしめた。
佐「俺、夢見てんのかな。Aが俺のために着てきてくれるとか、……ほんと夢みたい。」
『大袈裟すぎでしょ、』
そんなに喜んでくれると思わなかった。
私のこと本当に好きでいてくれるんだなって、それがなんか可愛いくて胸が擽ったくなる。
きっと佐久間を好きになるまであと少し。
周りの人も、祭りだから浮き足立ってて、
カップルや家族連れが屋台の方に歩いていく。
『私あれ食べたいな、あのじゃがいもがめっちゃ刺さってるやつ、』
佐「トルネードポテト？」
『そう、それ！』
あれ美味しいんだよねー、なんてお祭りの雰囲気に流されて浮かれてた私たち。
佐「A、行こっか。」
『うん。』
佐久間の手を取って、私たちも人混みの方へ歩き出した。
.
「A？」
佐久間がトイレに行きたいって言ったから、
少し離れたところで帰ってくるのを待っていた。
地元のお祭りだし、会わないわけないと思ってたけど、こんな1人の時に彼に会うとは思ってなくて。
『…っ、ふっか、』
しかもなんで、……ふっかも1人なの？
佐久間、まだ帰ってこないの？
お願い、早く戻ってきて。
ーーーじゃないと私、
私はひどく動揺してた。
風さえも息をやめたんじゃないかってくらい、周りの騒音も何の音も聞こえなくって、
そこだけが周りから切り取られたように、
ふっかしか見えなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4453人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こゆき(プロフ) - 希依良さん» こんにちは！！ハマっていただけて嬉しいです泣 楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！これからもよろしくお願いします！ (2020年5月13日 21時) (
レス) id: 0585c4282d (このIDを非表示/違反報告)
希依良(プロフ) - こんにちは！おはなしの展開とかもう全部どハマりしまして、毎回更新されるのを楽しみにしてます(//∇//)無理なさらず、頑張ってください(^^)応援してます！ (2020年5月13日 17時) (レス) id: 82893a530e (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - まみさん» ありがとうございます！佐久間くんは皆さんが思ってる感じの雰囲気と違う感じになっちゃってるので違和感ないかな、と思ってるんですがそのように言っていただけて嬉しいです！！今後もよろしくお願いします！ (2020年5月12日 10時) (レス) id: 0585c4282d (このIDを非表示/違反報告)
まみ(プロフ) - こゆきさんの物語の中で6月ならそうだし、11月ならそうだし、引き込ませる力があるなって思います！！佐久間くんの儚さ憂い感も絶妙です！胸が苦しくときめきます！ (2020年5月11日 23時) (レス) id: 0d3778baf6 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めいさん» コメントありがとうございます！そのように言っていただけて嬉しいです泣 焦らしまくってるので皆さん飽きてないかな、なんて不安に思ってたので嬉しいです！更新頑張ります！！ (2020年5月11日 20時) (レス) id: 0585c4282d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2020年4月25日 0時
