57. ページ9
.
「…土曜日、」
駅までの道を歩く途中、照はそう呟くと私を見つめる。
「…大丈夫だった？」
『うん、…もうね、悲しくなるくらい何もなかった。』
そう言って笑えば、照は眉を下げてきかなきゃよかった、みたいな顔をする。
…別に照がそんな顔しなくていいのに。
『いいの、わかってるから。』
ふっかの中に私に対して何らかのそういう感情があれば、きっともっと昔に行動に起こしてるはずだから。
だから私は本当に脈なしなんだと思う。
心配しないで、と照を見れば彼は何も言わずに私の頭を撫でる。
『あぁでも、映画見たよ、二人で。』
泣いたからほぼ内容は覚えてないけど。
『あと、朝ごはん美味しいって言ってくれた。』
ちょっと気合入れて作った朝ごはんをふっかは大袈裟なくらい、褒めてくれた。
そんな些細なことでさえ、私にとってはすごく大きいことなの。
思い出したら、泣きたくなるくらい胸が締め付けられる。
『今日さ、友達に言われたんだよね。お前は少しは男で遊ぶってことを考えた方がいいと思うって。』
遊ぶのは相手に失礼だからやらないけど、少しは違う人を見てみてもいいのかなって。
あいつみたいに、また誰かを傷つけたらどうしようって思わなくもないけど、でもそろそろふっか以外の人ともちゃんと向き合ったほうがいい気がする。
「…できんの？そんなこと。」
『わかんない。…だけど最近ちょっと面白い子がいてさ、』
私のつくった壁を余裕でぶち壊していく、変な奴がいる。
普段なら誰かに引きずられることなんてないのに、知らない間に自分のペースに持っていってしまう、変な奴。
『あいつともう少し関わっていったら、私もちょっとは変わるのかなーって。』
まあ結局ふっかに戻る気もするけど、と冗談っぽく言えば照の表情が少し陰る。
『そろそろ限界っぽいんだ。この前から私おかしくて、』
「お前、」
『だからさ、照、』
駅の改札口、沢山の人が忙しなく動くのを見ながら照を振り返る。
『もし私がおかしくなったら、その時は迷惑かけるかもしれないけど許してくれる？』
私の心の全てを知ってるのは、照しかいないから。
だから、自分勝手で申し訳ないけど、その時がきたら頼ってもいいかな？
照は私を見て、ほんの少しの間の後「いいよ。」って。いつもみたいなくしゃっとした笑みを見せる。
その笑顔に心の中でありがとうと呟いて、私は照と別れた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3850人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こゆき(プロフ) - 凛華さん» コメントありがとうございます！需要ありますか！私も目黒落ち書きたいなーと思ってるので本編終わったら書いてみますね、ありがとうございます！ (2020年4月25日 22時) (
レス) id: 0585c4282d (このIDを非表示/違反報告)
凛華(プロフ) - 余力があれば！目黒落ちもお願いします★需要あります…！コメント失礼しました。いつも楽しく読ませて頂いてます(^^)これからも楽しませてください (2020年4月25日 1時) (レス) id: 8c58893707 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - うたさん» コメントありがとうございます！ふっか動きましたねー、これからをお楽しみにしていただけたら嬉しいです！ありがとうございます、私のペースで頑張ります！ (2020年4月22日 23時) (レス) id: 0585c4282d (このIDを非表示/違反報告)
うた(プロフ) - コメント失礼します。ふっかさんどうするんだろうって思ってたんですが、動き始めておおお！となっております！！これからもこゆき様のペースで更新がんばってください(^^) (2020年4月21日 18時) (レス) id: ac1778f4fd (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - milkmilkmilk723さん» ふっか、ここからどんどん動きますよー！笑 今後もよろしくお願いします！ (2020年4月21日 16時) (レス) id: 0585c4282d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆき
| 作成日時：2020年4月8日 14時
