ご免なさい、愛してます。

9話 ページ11

『ねぇ、お兄ちゃん。

ここ開けなくていいから、聞いてて？』

今から私は、太宰さんに言われた作戦を

実行する。

きっと顔を見たらまた泣いてしまうから、

扉を一枚隔ててだけど、お兄ちゃん相手に

大きな賭けをする。

『...私ね、太宰さんと付き合うことに

なったの。』

そう、これが太宰さんから

教えてもらった作戦。

『それでね、太宰さんと一緒に

住むことになったの...。』

まだ、返事はない。

『だからね、あんまりお兄ちゃんに

会えなくなっちゃうんだ。』

どうしよう、また泣きそう...。

何でもいい、何でもいいから答えて。

扉に額をつける。

『ねぇ、お兄ちゃん。...もう一回。

もう一回、私の名前を呼んで...？

もう一回だけ兄妹に戻ろう...？』

もう一回だけでいい、あの懐かしい声で

私の名前を呼んで欲しい。

そしたら、もう何も望まないから。

『お願い...お兄ちゃん！』

「...A。」

『っ...！お兄ちゃん！』

「...良かったな、幸せになれよ。」

あ...、終った。

堪えきれず、頬を涙が伝う。

この賭けは、私の負けだ...。

『ありがとう、お兄ちゃん。』

ありがとう、貴方という存在を

愛させてくれて。

私、幸せでした。

『バイバイ、お兄ちゃん...。』

さようなら、私の愛しい人。

さようなら、私のお兄ちゃん。

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