今宵は月明かりに【Kota.Y】

シリウス ページ1

side.Kota





「…寒っ。」



いくら節分が終わり、立春が過ぎ、

春一番が吹いて、もう3月。

少しずつ暖かくなって来たと言えど、

まだ昼夜の寒暖さは大きいし、夜は冷え込む。

いつも何かに行き詰まった時、

自宅のベランダにでて、考える俺にとっては

あまり好きじゃない季節だ。






「わっかんねーな。」






そ、いろいろわかんねぇ。

昨年の伊野尾の活躍から世間では革命と騒がれ

JUMPは急成長を遂げた。

東京ドームで1日2公演なんて

今までになかった事もやらせて頂いた。

どのメンバーもドラマ、映画、CMなど

あらゆる方面へと出て行った。



…何が悪いのか。何がいけなかったのか。

俺は昨年、テレビに出ることは少なかった。

出演しても人気メンバーのついで。

そんな感じだった。

躍進するメンバー、グループ。

そこに変わらない俺。

最年長という責任と重圧。

そのプレッシャーだけが毎日のしかかってくる｡

やめたい。

やめても誰も気付かないんじゃないか。

そう思った事だって何度もあった。

でも、そのたびに思いだすのはファンの子。

いくら山田なんかより少なくても、

頼りない俺を、変わらない俺を

それでも好きだと応援してくれる子。

それが倒れそうな俺を支えていた。

でも、だからといって自分自身を

好きになれるかというとそんな訳もなく。

何も上手くいかなくて。

今日もベランダ。

まだまだ冬の寒空の下、ため息をつく。

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