episode.2-9 ページ10
「そんなに難しく考えることないねん、挟み撃ちやで」
「へ、」
思わず間抜けな声が出る。もう少し、こう、難度の高い答えを要求されているのかと思った。拍子抜けというか。目を見開いて驚きのあまり、パチクリとしていると耐えきれない、といった様子でシャオロンさんが笑っている。
「もっと安直でええねんて、まぁ襲われた時の報告とか何とかの情報持っとらんかったから余計に考えが及ばなかったんやろうけど」
そう言って彼は私が入室した際に持っていた紙束を私に差し出す。それは山賊達に襲撃された際の報告書だった。
「＜霧が深い森林と流れの早い河に挟まれて動けない私達は山賊達に応戦しましたが数人という少数の手勢に押し勝ちを確信した瞬間に、その倍の数の山賊に不意打ちを喰らい数名が負傷、応援に来られた白尾国の方を庇い、隊長が深手を負って殉職されました。＞……なるほど……？」
後に部隊は何とか撤退することが出来たそうだが、この山賊達の動きはまるで、
「「軍隊みたいですね」、やろ？」
言葉がハモって再び私は目を瞬かせた。悪戯っけな笑みを浮かべてシャオロンさんが私を見ている。
「他の報告書も似たようなものばかり、途中で商人が襲われたのも奇襲に近い形やったらしい」
まぁ、そこらの賊達よりかは知能があるっていう話やんな、とシャオロンさんが宣う。
「ていうことは、や。今まではまぁ死傷者出とらんかったから見逃されとった、というか周辺の警備兵で済んだ話もウチのモンが殺られたってことは軍が本格的に出てくることも向こうさんも察してはいるやろ」
「……作戦を変えてきたり、何らかの対策は練ってくる…そう仰りたいんですよね」
そう私が返せば、頷く。
「恐らく白尾国の方でも何かしら情報は握っとるやろうから、俺達がガッツリ作戦を練るのは向こうさんとお話してからになりそうやけどな」
その言葉に私はこくり、と頷いた。
「当日は俺の信頼出来る部下をAに数名付ける。後で紹介するからちゃんと顔合わせやらなんやら済ませといてな」
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作者名：須戸 | 作成日時：2022年2月13日 20時
