episode.2-8 ページ9
コン、コン、コン、コン。
少し年季の入った扉をゆっくりとノックする。分厚い扉を前に私は声を張り上げた。
「失礼致します。特殊作戦部隊補佐、Aです」
「入って〜」
ドアノブを引いて入れば、彼のカラーである黄色が目に入る。そう、私は1週間後に控える合同討伐隊に関する件でシャオロンさんから呼び出しを受けていたのだ。
書類から顔を上げた彼の顔は向日葵のようにパッと明るくなる。
「よぉきたなぁ、そこ座ってええよ」
「失礼します、」
コツ、と板張りの床を歩き、指さされたソファへと身を沈めればこれもまたなかなかに座り心地が良い。彼の執務室へと足を踏み入れること自体初めてのため、きょろきょろと辺りを見回す。部屋には旗、彼が使うのであろう複数の武器、本棚書類などを保管しているのだろう棚、クローゼット、そして奥に何処かへと続く扉があった。
「そんなに珍しいもんはないで？」
そう苦笑いしながらシャオロンさんが目の前に腰掛けてきたので自分の失態を知る。いくら初めてとはいえこんなに不躾に部屋をジロジロと見られたら不快以外の何物でもないだろう、慌てて頭を下げる。
「申し訳ありません、不躾に…」
「そんなに謝らなくてもええよ、気にせんで〜」
そう言って柔らかく笑うシャオロンさんが同部隊の部下の方々から慕われている理由も分かる。戦闘の際の容赦の無さやスタイルはなかなかに恐ろしいものがあるが普段の態度やこういう心の広さが部下達の心を惹いて止まないのだろう。
「で、早速本題なんやけど」
「はい、指示された通り周辺地図と過去15年程に起きた自然災害の記録を持って参りました」
この作戦会議を行うと彼に呼び出された際に持ってくるようにと指示されたのは2つ。
･周辺地図
･自然災害の記録
「助かるわ、まず賊達の報告場所に印付けてこか」
「はい、確か何件か報告されていましたよね」
そう言って地図のコピーに赤いインクでバツを付けていく。それを見たシャオロンさんは深く頷き、顔を上げた。
「国と国の境にある森林と河の周辺での報告が多い、なんでか分かるか？」
そう聞かれて私は首を傾げる。森林と河の周辺での報告が多い事が何に繋がるというのか。森林の中に彼らのアジトがあるのだろう、という予想はできるが出現箇所の理由などさっぱり予想がつかない。
「申し訳ありません、理由が思いつかないのですが」
そう答えればにやぁ、と効果音がつきそうな程にシャオロンさんが笑って口を開いた。
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作者名：須戸 | 作成日時：2022年2月13日 20時
