episode.2-3 ページ4
「連れて来ましたよ〜」
そう言ってチーノさんが談話室の扉を開ける。オスマンさんの執務室ではないのか、と私は首を傾げた。チーノさんの言う通りの事務処理ならば情報が最低限漏れないようにセキュリティのしっかりしている執務室で行うのが定石だと思っていたが。
「お〜チーノお疲れさん」
チーノさんの背後から部屋の中を覗けば、オスマンさんと鬱さんとエーミールさん、そしてひとらんさんが居た。
「Aちゃんも急に呼び出してごめんなぁ、取り敢えず座り？」
鬱さんが吸っていたのであろう煙草を消して自身の座るソファの隣を軽く叩く。それを見たひとらんさんがマスクをずらして私に声をかける。
「大ちゃんの隣嫌だったらここおいで」
「げどちゃん……」
「キモい」
「ｼﾝﾗﾁｭ」
ひとらんさんの申し出は有難かったが、彼の指す空いている席はオスマンさんとひとらんさんの間で明らかに両側が空いている鬱さんより手狭そうだったために丁重にお断りを入れて比較的隙間のある鬱さんの隣へと納まる。
…少し残念そうな顔のオスマンさんと視線を合わせないように徹底した。
チーノさんはスムーズにエーミールさんと1つ席を開けて座る。これで三方向から真ん中の机を囲むという図になった。
「……で、私は何用でここに呼ばれたのでしょう」
思い当たる限りはポカや失態は犯していないはずだが。それともチーノさんの言う通り“色彩の儀”を手伝わせるためなのか。呼び出し主であるオスマンさんを見遣れば読めない笑顔で沈黙を返される。
訪れた数秒の沈黙。
「今年の“色彩の儀”は幹部補佐就任式も兼ねようと思って呼び出したんやわ」
そして爆弾は落とされた。
「幹部補佐、就任式……？」
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作者名：須戸 | 作成日時：2022年2月13日 20時
