【d!】縁を結んでⅡ【夢】 (ページ12)

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episode.2-11 ページ12

「すみません、ありがとうございます」

馬に乗せてくれた男性に挨拶すれば男性の顔が向けられる。

「いや、気にしないで…緊張されてます？」

メガネの奥から覗く藤色の理知的な瞳が何とも印象的な男性だ。シャオロンさんが以前の打ち合わせの後に紹介してくれた部下の方で彼の渾名は“ジョン”らしい。実名を聞こうとしたら上手くはぐらかされたので私もジョンさんと呼んでいる。が、渾名でそんな名前らしい渾名を付けられることがあるのか？謎である。

「はい、本日は宜しくお願い致します」

気を取り直して馬の腹を軽く両足で叩いて合図をすれば、馬が歩き出す。

時折大丈夫か、とでも言うように乗る私を振り返るので礼を述べながら首元を撫でてやれば満更でもなさそうに馬が前を向く。本当に雪のように真っ白なこの馬の名前は“白蔵”と言うらしい。シャオロンさんいわく、以前城で飼っていたシロクマに名付けていた名前らしいが……冗談だよね？

とにかく美しい見た目とは反して渋い名前を付けられた彼は悠々と前を行く隊列に習って進んでいく。その少し後ろをジョンさんが着いてきた。

｢白尾国との境界までは2日半はかかるから体調悪くなったり異常出たら直ぐに言って｣

そうジョンさんに声をかけられて頷く。

遠征擬きはこれが初めてだから足を引っ張る訳には行かない。少しだけ背筋が伸びる、けれど今から気を張りつめていても無駄に体力使うだけだなと思い直して力を抜いた。

ふ、と後ろで笑う声が聞こえる。今の一連の流れを見られ、察されたのか、少し恥ずかしい。

馬の蹄が大地を蹴る音が空気に響いた。