【実況者】本当の名前_real name_ 上 (ページ15)

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#観覧車ページ15

最後の乗り物はキヨが家からずっと見ていた観覧車。

乗ったあとに手を繋いだままだったのに気づき、そーっと離す。

向かい合って座ると、今日1日横から見ていたキヨの顔が初めて正面で見れた。

キ「今日楽しかったな」

『うん、楽しかった』

キ「良かった、これで楽しくないとか言われたらどうしようかと思った」

『ふっ、一応その心配はあったんだね』

キ「……あのさ、ちょっと面白いもの見つけたんだけど貰ってくれる？」

『え、なに？』

そう言うとキヨは1つのキーホルダーを取りだす。

『…え、ちょっと待ってちょっと待って』

キ「これ、分かれるんだよね」

キヨはそのキーホルダーを2つに分けた。

どうやら磁石でくっつくタイプのやつらしい。

私はつい声を出さずに笑ってしまう。

別にくっつくタイプのキーホルダーに関してはなんとも思っていない。

問題なのはその絵柄なのだ。

『その文字なんとかならなかったの』

キーホルダーには大きく【ズッ友】と書かれており、【ズッ】と【友】で分かれている。

キ「1番かわいかったから」

『センスが女子小学生なのかな』

キ「っぶ、」

キヨも思わず吹き出す。

『でもありがと。貰っとく』

私は持っていた鞄に【ズッ】のキーホルダーをつけた。

キ「そっちでいいの？」

『【友】だけつけててもなにそれ、ってなっちゃうでしょ』

キ「【ズッ】の方がなるだろ笑笑」

キヨはそう言って笑うと、自分の鞄にも同じようにキーホルダーをつけた。

キ「ほんとおもれー笑俺さ、Aといると素の自分でいられるんだよね」

『そう？』

キ「気を遣わなくていいっつーか」

『…確かに私も楽かも』

キ「だよな！？なんなんだろうな、同じような人間なのかな」

『それはそれでなんかちょっと嫌だな』

キ「なんで嫌なんだよ笑」

『無理矢理お化け屋敷行かせるような人でなしと一緒にして欲しくないわ』

キ「それはごめんて！」

『初めて聞いたよ』

キ「えぇ嘘！？」

あまり仲良くない人と乗ると時間が永遠に感じる観覧車もキヨと乗れば一瞬だった。

キ「じゃあ帰るか」

『だいぶ暗くなったね』

夏なのに暗いということはかなり時間が経っているのだろう。

私たちは少し早足で家に向かって歩き出した。